moving mountains :01



「私が食事にありつくにはどんな対価が必要ですか?」
「君が我々の食事の用意をすればいい」
「私が寝床を手に入れる為に必要な対価はなんですか?」
「そうだな…教会内の掃除でもしてもらおうか」
「意外と良心的…」



どれ程無理な要求がなされるかと思いきや、肩透かしを食らうほどの好条件。しかしマキナがうっかりそれに騙されることはない。(果たして騙す気が相手にあるかどうか疑問だが)最初は好条件で相手を油断させておいて、段々と法外な要求をしてくる可能性もある。気を許すことはないが…それでも――勝手にド外道呼ばわりしていた相手の認識を幾らか改めたのは事実だった。



「宝具使っちゃいけないとかそういう制限ないですよね?」
「…綺麗になるなら何でも構わんよ」
「なんだ、嬢ちゃんは家事に特化した英霊なのか?」



掃除に宝具を使うなど、どんな英霊なのかとからかい混じりに問われる。



「ただの道化だ、ソレは」
「なんだ?アレはクラス名だったのか?ジェスターってのは」
「…アーチャーですよ、弓らしい弓持ってませんけど」



マキナのその回答にギルガメッシュだけでなく言峰も眉を傾げる。



「…君がアーチャーなら、君の召喚したギルガメッシュは何のクラスで現界した?」
「同じアーチャーです」
「……」
「私の時代の聖杯戦争は、一クラス一人とか制限なかったんで。サーヴァントの数の制限とかも」



冬木の聖杯が英霊の座から呼び出すことの出来るサーヴァントの数は7人が限界。それに制限がないとは一体どういうことなのか――…例え世界で最も格高い霊脈に降臨させた聖杯であろうと、サーヴァントを無制限に呼び出すことなど絶対に不可能だ。



「君の時代の聖杯はこの冬木の聖杯より強力なようだな…」
「そうなのかもしれないですね」



よくわかりませんけど、と幾らか理由はわかっているだろうにマキナはそう嘯いた。情報を無償で提供するなど狂気の沙汰である。



「あ、そんなことより…寝床がトイレとかゴミ置き場とかだとちょっとヤです。どーゆーところですか?」
「二階に空き部屋がある、そこを使ってくれ。最低限の家具も揃っている」
「そうですか、なら全然文句ないです」



エアコンや冷蔵庫など、なかろうといつものように宝具で作ればいい。一安心したマキナに、青の槍兵が野卑な…それでいて何処か無邪気な笑みを浮かべて言った。



「寒かったらオレが暖めてやるからな」
「そーゆーのは結構です」



遠慮すんなって、としつこいランサーをすっかり無視して…今後どう教会の清掃を進めていくか、マキナは中を見回して思案する。しかし教会の掃除の前に、もう5時を過ぎそろそろ夕食の時間が近づく。マキナは何故かにこにこしながら言峰に語りかけた。



「激辛麻婆は作りませんよ?私」
「…元より、アレは君などに作れるものではない」
「そうですか、安心しました」



激辛麻婆が作られなくともペナルティなどはないらしいと知り、俄然やる気を出したマキナは気合をいれ、表情も活き活きとしていた。



「よし、頑張ります!働かざるもの食うべからず。バリバリ働いてバリバリ調べて……」



が…



「……王様に会えるといいなあ…」



またギルガメッシュのことを思い出して座り込んでしまう。意気込んだり、意気消沈したりと忙しいマキナだった。




Moving Mountainsstand my ground forever...




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