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「いやあ…この店では10年前にも一度に一等を3枚も当てたお客さんがいてねえ。その記録を更新して4枚に二等3枚も当てちゃうなんてお客さんも大概だねえ」



商店街で二人の姿を見つけたかと思えば、そして何をしているかと思えば…マキナはスクラッチくじを買っていたのだった。
…何してるのあの子。目立ちたくないとか言ってた端から、何を一度に80万以上の大金を手にしているのか…!



「うーん、これで当分はどうにかなりそうかな。帰ったら士郎に渡そう」



 身分証明書偽造するのも後先が面倒だし、と二等くじのみ換金して6万円を手にし、一等くじを鞄のポケットに仕舞いながら店を後にするマキナ、と金ピカ。ああ、そうか。そんな大金銀行じゃないと換金できないもんな。

…しかし10年前か、何だか気になるな。確かにあの店はよく当たりが出ると評判だったけど。そして『金の卵を産む鶏』とやらの力は本当だった訳だ。



「その程度のはした金、あろうとなかろうと大差なかろう」
「庶民にとっては大違いです、何買おうかなー」



フフフ、と心底嬉しそうに笑っている。とりあえず、楽しそうで何よりだ。

しかし…目立つ二人だ。
この時間帯だと若者はそう多くは無いが…買い物しているおばさん達に、ご老人、商店街の人々…並び歩く美男美女に、何かの撮影かとしきりにその背後にカメラマンやテレビクルーがいないかと探してしまっている。…生憎、未来から来たタダのHAKAISHAです。

でも、折角なんだから手くらい繋げばいいのに。勿論マキナからは繋がないだろうが…まあ、デートが何かわからないような金ピカに、そんな細かい気遣いなど望むべくもないか…。

並んで、少々淡泊に歩く二人を引き続き追う。橋を渡り、ついに新都──そしてヴェルデへ。



「えー、まずは工具工具。なになに…『バールのようなもの』?」



マキナはまず、生鮮食品は後回しにして腐らないものから当たるようだ。まずは工具──でも、アレ?俺…そんなモノ書いたか…?怪訝そうにメモを見つめた後、マキナは金ピカを見上げる。



「『ようなもの』って何ですか?バールじゃダメですか?」
「我に聞くな」
「……バールのようなもの…バールではない別の何か、しかしバールのようなもの…」



真剣に考え込み始めるマキナ。
ああ、そんなもの買わなくていいって飛び出して言ってしまいたい…というか、例えそんなモノがあったとして、買ってこられても困る。寧ろそんな禍々しいものは、無い方がいい。もしも黒い“ナニカ(さくら)”の手にでも渡ろうものなら…俺の身が酷く危ない気がする…!



「あっ、わかった」



マキナは、これで間違いないとばかりに閃いて、びしっと人差し指を何故かギルガメッシュの方に向ける。



「バールの『原典』じゃないですか?きっとそうですよ、否そうに違いない。衛宮士郎はバールの原典を欲しがってるんですよ」



そ、そんなモノ欲しがってねぇー!!っていうかバールの原典ってなんだ?そして俺が本当にそんなもの欲しがるとマキナは思ってるのか?…金ピカも首を傾げてちょっと困惑気味だ。



「よし、このバールを買いますので一度宝物庫(バビロン)に仕舞ってください。そしてバールの原典を取り出してください。衛宮士郎に渡します」
「なっ…そのような高貴さの欠片もない粗末な鉄挺を我が宝物庫に納めよというのか…!?」
「バール(のようなもの)ナメないでください、バール(のようなもの)は最強です! 窓も割れれば木箱もATMも壊せる、人も殴れれば宇宙人も殴れる、ゾンビは倒せるはエアコンのスイッチを押せるは…文句なしの万能武器!」



…知ってんじゃねーかコイツ
そして金ピカ、思わず騙されそうな顔をするな。それと、俺の隣で話を聞いているセイバーも騙されかかっているのでセイバーには、マキナが言っていることは冗談だと必死に説明する。



「何よりソロモン72柱の1柱であり、不可視、記憶操作の機構まで持つといいます」
「な…なんだと…!?」



…遊んでる。コイツ完全に遊んでやがる…悪魔の笑みだ。完全にからかって…あわよくば俺までからかおうという魂胆。完全無邪気のような有邪気の笑顔。普段の羞恥の仕打ちに対する仕返しか?と思って続きを見ていると…



「…やめましょう、今のは聞かなかったことにしてください」



フッ、と溜息を吐いて冷めた表情に戻るマキナ。さっきまでの楽しそうな黒い笑顔はどうした。



「何故だ?お前がそこまで価値を認めた鉄挺だ。宝物庫(バビロン)に納めてやらんこともないぞ」
「勘弁してください、王様の背後から大量に飛び出してくるバールとかマジ見たく無いです」



それは俺も見たくない。が…凄く見たい気もする。



「ちょっと他の工具も買ってきますので待っててください」



そういってマキナは、やはりバールは持ったまま他の工具を探しに行った。
って…やっぱりバールは買うのか!?

そんなこんなで、前途多難なHAKAISHAの買い物は幕を開けたのだった。





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