from Mayhem :10



──しかし。
思った以上に。
マキナは後悔を。

一の月想海よりも幾分レベルアップした敵性プログラム(エネミー)。しかし雑魚は雑魚である。そしてそんな雑魚を、頼んでもいないのに一々罵倒しながら倒してくれるのは英雄王である。まあ、それだけならいいというか、逆に嬉しいかもしれない。
だが──



「ほ、本当に皆こんなことやってるんですか…!?」



トリガーの取得と同時に重要なアイテムがないかとマッピングデータをコンプリートさせる目的もある程度達成する為アリーナを徘徊する。その道すがら…必ず何十と敵性プログラム(エネミー)に遭遇する。相変わらずその一撃、一撃が破格の威力を持つというのに
ギルガメッシュは“宝物庫の虫干し”と称し、オーバーキルすら軽く越える暴威で小さな敵を大きく潰し、無駄遣いした魔力のツケをマキナに払わせているのだ。

昨晩繰り返したのと同じ方法で。

捻じ込まれた舌が、口腔内を蹂躙しては唾液を絡めとっていく。唾液を通して多くの魔力を持っていかれるからだろうか?今にもマキナの腰が砕けてしまいそうなのは。



昨晩飽きるほどやったとはいえ、恥ずかしくないワケがない。例えここがマイルームだったとしてもだ。百歩譲って皆やっていると…必要なことだと仮定しよう。だが、この調子ではいずれマスターである自分が昏倒してゲームオーバーになってはしまわないだろうか…!?マキナは今日こそ負けてなるものかと必死に持ち堪える。



「だっ…よく考えたら男同士だったらどうするんですか…!気持ちわる…」
「お前の魔力供給が乏しいのだから仕方無かろう」
「……!…!!」



 嘘だ、絶対嘘だ。…多分嘘だ。
『永久機関(偽)(エネルギー・インテーク)』Exなんていう破格の固有スキルがあって、常時、延々とエネルギー供給ができる枯渇知らずの自分の魔力供給が乏しいなど。有り得てたまるかと思いつつも、魔術回路の不備の考えられる今──…面と向かって否定できないのが悔しい。



「なに、お前の場合減るものでもあるまい。惜しまず捧げよ」



終わったかと思えば顎は捉まれたままで、また近づく顔にマキナが頬を赤くしたまま目を瞑った。
その時だった。



「アーチャー! このっ、私のサーヴァントから手を放せ!!」



それは、マキナにとってもギルガメッシュにとっても予想外の…そして少々意味不明な怒声だった。怒声の主は、やはり二人にとって、しかし互いに違う意味で、意外過ぎる人物だった。



「君は男を見る目が無いな、マキナ。その男はダメだ!よりによって──ソイツは!!」



一回戦、決戦直前に出会った──記憶喪失の少女。

“アーチャー”…それは誰が?“マキナ”…何故自分の名前を知っている?


記憶喪失だった少女は、その様子を欠片も残さずに、はっきりとした、見違えるような強い意志を瞳に宿して仁王立ちしていた。そしてその背後に、赤く華々しい衣装を身に纏った剣の英霊が控えていた。



 


(…)
(2011/10/16)






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