from Mayhem :01


「間久部じゃないか!」
「…間桐慎二」



アリーナ前に来ると、間桐慎二の姿。向きから考えると丁度アリーナから出てきた所らしかった。だとしたら、なんたる僥倖…運が良い。自分のサーヴァントとしての『幸運』ステータスは『E』どころか『E-』なのだが…。これから自分と金キラ男の真剣勝負(ガチバトル)をするのにこの男に見られては都合が悪い。最悪、アリーナに運悪く間桐慎二がいた場合はもののついでに消すことも考えていたのでその事態は避けられそうで一安心だ。



「トリガーコードはもう取得できたかい?仮初めとはいえ元親友である君との戦いを楽しみにしてるんだから、トリガーが揃わず不戦敗なんて醜態は頼むから晒してくれ…」
「悪いけど今間桐の相手をしている暇ないから」



いつものことだが、ぶっきら棒に話を遮り吐き棄て通り過ぎようとする。怒り出す可能性もあったが、ニヤニヤと下品に笑っている。相変わらず海産物のような男だ。否、訂正する。それはあまりにも海産物に対して失礼だ。何よりこの男児と同じ土俵に立って話をする訳にはいかない。虚しくなってしまうこと請け合いだ。



「ははーん…その様子じゃまだトリガー見つかってないようだね」



察しが悪くて助かる。しかしある意味トリガー以前の超超初歩的な問題を抱えているので
偉そうなことは言えないのも確かだ。因みにトリガーαについては既に取得済みだ。



「そんな感じ。」
「まっ、凡人に天才と同じレベルを求めるなんて酷かもしれないな。せいぜいあと五日頑張ってくれよ」
『…もう行っちまったぞ?慎二』
「えっ」



サーヴァントの言葉にハッとして当たりを見回すも既に間久部マキナは跡形も無い。舌打ちする慎二をヨソに、慎二のサーヴァントである海賊然とした女はマキナが消えた扉の方を見たまま、眉を顰めた。

妙だねぇ…
サーヴァントはサーヴァントの気配を感じ取る。マキナの周囲からサーヴァントの気配を感じるものの何か違和感があった。それが何か明確で有力な情報にまで漕ぎつけられない現時点で彼女はマスターに無用な混乱を与えぬため、その感想を告げなかった。



「!」




二人がアリーナを後にし、一階の廊下を少し歩いたところでだ。彼女はまたサーヴァントの気配とすれ違った。その気配はマスターも連れずに、どうやらアリーナに向かっているようだ。タイミング的にはマキナの後を付いて行くサーヴァントとも考えられなくは無い。だが、マキナの周りからはサーヴァントの気配がした。マスター一人がサーヴァント二人を従えるルールブレイクなど、このムーンセルに於いて在り得ない。大方何某かマスターの命で単独行動をするサーヴァントだろう。彼女はそう結論付けるのだが、それでも矢張り、違和感は完全には消えなかった。





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不幸なことに、このアリーナ『一の月想海』第一層は狭い。端から端まで踏破しマッピングデータを回収したが…マップ中、入り口部分が最も迎え撃ちやすいだろう。どのような戦法にも対応可能ではあるが、遮蔽物が無い方が有りがたい。入り口からまっすぐ進んで3つ目のホールの中央で向きを変え、サーヴァントを迎え撃つ体勢に。索敵兵装(レーダー)が、アリーナ入り口にポイントを示したと同時に黄金の男が姿を現した。



「この我を出向かせるとは大した度胸だな、雑種」
「…ご足労感謝致します、純血種殿」
「ここが貴様が選んだ墓場か」
「…最早御託を並べる必要はないだろう」



ここまで来たのだ。邪魔者もいない。
一刻も早く戦争を始めるべきだ。



「…殺される人間の目ではないな。痴れ者が…我に抗う気か!」
「語るに及ばん、ゆめゆめ死なんように気を配れよ、サーヴァント!」



最早無言のサーヴァントの背後が一面金色に光る。そしてそこから無数の刃が顔を出した。



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