moving mountains :08
ギルガメッシュがマキナの部屋で目を醒ました時、勿論そこに部屋の主はいない。
だが、それと同時にテーブル上のポットが宙に浮き、ティーカップへと暖かい紅茶を注ぎ始めた。同時にホットサンドメーカーから焼きあがったばかりらしいクロックムッシュが現れ、皿の上で真っ二つになる。新鮮なベビーリーフも添えられ、程よくドレッシングが掛けられる。
傍の小さなバスケットの中には、マキナが朝焼いたばかりのクッキーが何種類も添えられている。
椅子は座りやすいように一人でに引かれ、主を待っている。
一見魔法の家だが、実際は科学(テクノロジー)による究極のスマートハウス。無駄な武装機能をつけられた家庭用宝具である。
なるべく食事を作り置きにしない、という約束のもと、マキナが試行錯誤した妙技というか、苦肉の策というか。
罵るべき対象は既にこの教会に存在しない。ギルガメッシュは淹れたての紅茶を啜り、ふと銀のフォークに目を遣る。
マキナからのメッセージカードが置かれていた。
内容は端的で、だというのに相変わらず一言余計なのだった。
“直接作れなくてごめんなさい、王様(じゃないけど)”
ギルガメッシュは、そのカードを指先で弾き、床へと落とした。
[next]