Circular Cline Collapse...(sleeping awake) :05


「さーて、今日はBBちゃんねる特別編です!今回だけ特別にセンパイ以外の人からの回答も認めてあげます」


成る程それで先ほど凛が抗議の声を上げることができたということだ。


「さっそく第一問『センパイのスリーサイズ』を答えてくださーい☆」
「すりーさいず!?」
「ほーらセンパイ、恥ずかしがってる場合じゃないでしょう?」
「………ごめん。測らないとわからない……」


早速のピンチである。だが―――…よく考えたらソースコードから調べればいいことなのでは…と思いついたと同時に。


「先輩!私わかります、健康管理AIですから…!」
「マキナ、君のスリーサイズはバスト83、ウエスト55、ヒップが78だ」


挙手をした桜とアーチャー、だが先に答えたのは屈強な弓騎士の方だった。活躍の場を取られて悲しそうな表情になる桜の横で、正解を勝ち取り、マスターに貢献したことでドヤ顔で仁王立ちをしているアーチャー。と、ドン引きしてアーチャーを見ているマキナがいた。


「ちょっ………!!アーチャーはなんで知ってるの……!」
「当然だろう、私は君のサーヴァントなんだぞ?マスターの健康状態を綿密に管理する必要があるからな。君の身長・体重・体脂肪率・睡眠時間・摂取と消費カロリー全てを記録しているぞ」
「頭おかしーよあなた!!」


流石のマキナも、今までそこまで管理されたことは―――…あったかもしれないが、組織ならともかく、個人が記録しているとは理解に苦しむ。だが、そんな風に罵られても、アーチャーは逆に“何が悪いのか”首を傾げるだけだった。


「もう、次の問題に行ってもいいですかー?」
「どうぞ、お願いします」
「第二問『センパイのコンプレックス』を教えてくださーい」
「私のコンプレックスですか!?…………身長が低いこととか……?」
「ブブー、残念ですが違いまーす☆」
「違うの!?」


なんだろう、コンプレックスなどと言われれば、思い当たることが多すぎる。この言うことを聞かない鋼のような髪だってそうだし、眼鏡をするとレンズにぶつかってしまう、多すぎる睫毛も鬱陶しいし…


「マキナ。……君のコンプレックスは、胸の大きさだ!」


アーチャーの真剣な告白―――そして、次の瞬間にはモニターに正解のアニメーションが流れたのだった。そしてマキナはやはり…明らかに軽蔑するような目でアーチャーを見ていたのだった。最早、無言で。盛大に怪訝そうな顔をしてアーチャーを凝視、回答を求める。


「……諸々の事情でな。別に私が聞き漁ったワケではない。成り行き上知ってしまっただけだ。」


今度こそ自分は悪くないと、首を振りつ無罪を主張するアーチャー。だが…


「アーチャー!」
「な、なんだねマスター」
「自害しろ!」
「ぐふっ」

令呪の使用はもったいないからしない。
マキナは、持ち前の身体能力を駆使し、一瞬でアーチャーの前まで距離を詰めると、その脛めがけて、必殺のアレを繰り出したのだった。自害しろといいつつ、殺害である。そして崩れ落ちたサーヴァントを尻目に、憤慨しながら再度挑戦者席へと戻るマキナ。


「なんで!?なんで悩むのよ?!小さいわけでもないし!」


問題には正解したものの、色々と疑問が残るものであった。思わず凛がそう叫んだのも当然だろう。知られてしまったからには仕方ない。マキナはもじもじしながら弁解した。


「…………だって中途半端なんだもん!巨乳でも貧乳でもないなんて!そんなの―――…存在しないのと同じだよ!!アイデンティティってものがさ!」
「世の中の貧乳女性に謝りなさい!!」


思わず、今度は凛がマキナに向けてcall_gandor(64)を放つ番だった。ワケのワカラナイことを喚く悪友に、お灸を据えねばならないだろう。マキナの脳天に直撃したソレは、マキナの額に赤い痕をつけ、一瞬の激痛を与えたのだった。


「ミス遠坂の言う通りです。ボクはマキナさんの胸の大きさは、とてもいいと思いますよ!好みです!」
「わあああああっ!!これ以上やめてほしいんですけど!!」
「もうギブアップですか〜?センパイ、まだ二問目なのに先が思いやられますね?じゃあ、―――第三問『センパイの弱点は?』」
「わ、わたしの弱点ですか…………」


弱点、だと―――?
それをこの面々に晒せ、ということなのか?―――というか、弱点ってなんだ?そういえば今まで、明確に自身の弱点を把握していなかった気がする―――…マキナが真剣に思考を働かせ始めたそのときだった。


「マキナ、ちょっとこっちに来てくれる?」


そう言い、凛が手招きをする。またガンドでもぶつけられるんじゃないかと心配しながらも“いいから来なさい”と有無を言わさない凛に従う他はなかった。


「うひゃあ!?」


凛の眼の前まで近付いた瞬間だ。彼女は素早く、その指先をマキナの襟ぐりに差し込むと、つー…とうなじに這わせたのだった。その手つきがいやらしい。


「この痴女!痴女坂!!」


その感触に総毛立ち、飛び上がった上でダッシュで席に跳び戻ったマキナは精一杯威嚇しながら、涙目で凛を睨むのだった。だが、その後ろのモニターには、やはり正解のアニメーション。マキナがなんと言おうとも、これで三割はクリアである。


「マキナさん……うなじが弱かったんですね…覚えておきます」
「誰だって弱いですよ…!!しかも痴女坂の触り方がエロすぎるんです!」


あくまで悪いのは自分ではないと主張するマキナを皆、生暖かい目で見守っていた。


「第四もーん!センパイ、『何フェチ』ですか?」


これまた答えに詰まってしまうマキナ。そんなこと、考えたこともなかった。回路や設計においても、ここまで悩んだことはなかった。が、自分自身のことなのだ。何とか過去から統計して答えを出さなければ…


「匂いだな。これだけは断言できる」
「えっ、えっ…!?私、何か匂い過剰な執着を見せたことあった!?」
「ある」
「―――――ま、まあ確かに……言われてみれば匂いに敏感かも。視力失ってた時は結構頼りにしてたし……」


ここまでアーチャーが三問正解。“視力を失っていた”という話は、場にいる殆どの者にとって初耳だが、ラニだけは、表情を変えずに様子を見守っていた。そして、テンポよく番組は続いていく。


「五問目です。『センパイがパートナーに求めることは?』」
「パートナーってどういう…?今ならアーチャーについて答えればいいの?」
「じゃあ、まずはアーチャーさんについてお願いします」


これなら答えられる。というかマキナにしか答えられない。思いついたことをそのまま言えばいいだろう。


「強いていうなら……洗濯物は私が畳むから置いといてほしいです。あ、あと私が休んでる時間までマイルームの掃除とかやめてほしいんだけど…気になって寝れないよ。家事好きなのはわかるけど、今度からソースコード書き換えるからね?」


良い機会だから、言いたいことを言ってしまった。想像に漏れず不平不満を口に仕掛けたアーチャーだったが、BBに遮られる。


「じゃあ、人生のパートナーに求めることは?」
「えっ、えっ……!?私結婚する気ないんだけど……」
「する気がない、じゃなくてちゃんと質問に答えてくださーい」


その質問の回答には、誰もが口を挟む事無くその集中がマキナに注がれた。質問の内容にも狼狽したのに、全員の視線に余計に混乱してしまう。面白い回答など、この状況で思いつかない。だから真面目に答えるしかなかった。


「えっと、その……私の為に自分を犠牲にする必要はないから、好きに生きてほしいかな…その代わり、私も好きに生きさせてもらうけど。とにかくお互い過干渉をしないということで」


その回答に、特に突っ込みを入れるものはいなかった。面白くはない、とはいえ、これ以外に答えようもないだろう。これにはBBもダメだしのしようも仕様もない。BBは無言でモニターに正解のアニメーションを流す。暫し思案していたレオが、次の問題を用意する合間に、マキナに提案を。


「干渉し過ぎない…ですか。僕も西欧財閥総主としての務めがありますし、マキナさんはマキナさんで研究開発に忙しいでしょう。僕とマキナさんの二人なら……必然的に過干渉が避けられますね。」
「…そうかもしれないですね」
「でも、偶の二人きりの時間くらいは、イチャイチャしてもいいですよね?」
「いや、私は総主とも結婚しませんから。」


例え条件が合おうとも、そこはキッパリ否定するマキナ。昔、その部分を曖昧にしてきたから今の状況があると思っているので最近は確実に否定するように努めている。取り付く島もないマキナに、レオはやれやれと溜息を吐いた。

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