Circular Cline Collapse...(sleeping awake) :05
一体何が―――
「余計なことをペラペラと。一体誰に似たんでしょうか―――…」
起きたか、考えるまでもないだろう。ハイサーヴァントたるアルターエゴの影響を問答無用で遮断(シャットアウト)できる存在など、この世界には一人しか存在しない。
「…………せーんぱい?」
「な、なに?BB」
「情弱乙☆」
「!」
突如、情報弱者であることを罵られるマキナ。
「まあ、先輩の必死で憐れな姿見てたら…色々教えてあげたくもなりますね」
ブラックメサが、マキナに色々教えたがったのも仕方が無いかもしれない。と。一人頷いたBBは、突如手に持っていた教鞭(支配の錫杖)をマキナに向けて振り下ろす。当然、何事かと身構えるのだが―――……
「そこで先輩!私も大サービスで一つ教えてあげちゃいます!」
豚にでも変えられるのかと思ったが、そうではないらしい。……そして、ブラックメサに対して喋りすぎだと憤っていたというのに、今度は自分が喋ってくれるらしい。“一体誰に似たのか”なんて言っていたが、それはつまり誰のことだとは誰も口にしないが。
「レオさんはもうわかってるんじゃないですか?この迷宮が――――――誰のものなのか。」
得意そうな表情で、振った教鞭を左手で受け止め続けるBB。パシ、パシ、と乾いた音だけが鳴り響き―――何故かまだ“BBちゃんねる”のBGMが流れていないことに今更気付く。
BBの発言に、レオは口を開かず表情も変えない。否定でもなく肯定するでもないその反応は、何を意味するのだろうか。
「この迷宮は……先輩、あなたの迷宮です!迷宮の衛士は他の誰でもない、先輩なんです!!」
もう一度教鞭の切っ先をマキナに向けて勢いよく振り下ろすBB。再度身構えるマキナだが、ここでBBちゃんねるのBGMが流れ始めただけだった。
…………しかし今、BBはなんと言ったのだ?
代わりといっては何だが、凛が「はぁ!?」と大声を出して立ち上がる。恐らく此処に岸波白野が居たら、彼女も同様に驚いていたことだろう。
「…………待てBB、どういうことだ…!?」
「は、―――え?でも私ここにいるじゃん……?」
困惑する主人と従者に、これみよがしの溜息を吐くBB。両手を腰に宛てて、ふるふると悩ましげに首を振るのだった。
「もう、先輩鈍すぎてイヤになっちゃいます!こんなことで自分を攻略できるんですか?先輩、ココにきてから無くしたものがあるでしょう?」
マキナが無くしたものは、主に二つある。ギルガメッシュに関する記憶と―――………
「………サーヴァント能力」
「ピンポーン☆正解です!そうなんです、BBちゃんたら天才!先輩からサーヴァントとしての情報体を分離して、衛士にしちゃいました!前の二人が不甲斐なかったのに比べて、この衛士(センチネル)なら間違いありません!なんたって秘密主義のセンパイですから―――…自分のSGを暴かれるなんて先輩にとっては耐えられないことじゃないんですか?」
BBの暴露に、生徒会一同は唖然としていた。
確かに、その発想はなかった。
しかもSGを暴く役割を負っているのは、マキナ自身。彼女の心が拒否してしまえば、迷宮探索はここで滞ってしまう―――…
「……他人に暴かれるよりはマシだよ。なんなら今ここでSG3つ自暴してやる!」
「無駄ですよ、だってセンパイはまだ自分のSGが何か自覚してないんですから…愉快なお仲間に手伝ってもらうしかないでしょう?」
自身が衛士にされたことを嘆く暇もなく、頭を抱えて、自身のSGが何かを考え込んでいるマキナを見て、BBはわざとらしく大きな溜息を吐いたのだった。
「―――もう、センパイったらどうしてこんなに分からず屋なんでしょう?そうですね…………どうですか?先輩。ひとつ私とミニゲームをやりませんか?」
教鞭を振り下ろされること、三度目。
今度はそれと同時にBBちゃんねるのスタジオがBBの周りに出現したのだった。何やら、有無を言わさぬ状況である。
「どういうゲーム…?」
「ただのクイズゲームですよ☆私からの十個の質問に答えてくれたら…豪華商品を進呈してあげます!名付けて“桜散る☆先輩の十個のミニSGを暴け!”です!」
オオーッと盛大な歓声(※録音)がスタジオに湧き上がる。既にスタジオ中央のモニターにタイトルが表示され、挑戦者席が用意されている。
「ちょっま………豪華商品てなに…?」
スポットライトがマキナとBBに当てられている。挑戦を煽るような拍手(※録音)に掻き消されそうになりながら問うと、BBは一度、一切の表情を消して静かに両目を閉じた後、一拍おいて答えたのだった。
「…先輩のサーヴァントとしての固有スキルを一つだけ返してあげます。どのスキルが返ってくるかはランダムですけどね!どうです?ゲームに挑戦しますか?センパイ」
マキナのサーヴァントとしての固有スキルは現状3つ。
“永久機関(偽)(エネルギー・インテーク)”
“悲劇の少女(ヒロイン・オブ・ザ・トラジェディ)”
“金の卵を産む鶏(ガッルス・ガッルス・ドメスティクス)”
どれが返却されるにしろ、助かることに違いはない。
「……やる。」
それに、何よりマキナ自身が渇望していたサーヴァント能力が一部でも戻るならば、拒否する道理はない。マキナはスタジオに上がり、そうして挑戦者席へと席を降ろしたのだった。一層の歓声(※録音)がスタジオに木霊していた。
[next]