Circular Cline Collapse...(sleeping awake) :02

Circular Cline Collapse...(sleeping awake)


やはりというか、やっぱりというか。矢張りというか…マキナは今とても居住まいが悪かった。

落ち着きのない子供のようにそわそわしながら半無意識的に出口の方ばかり見ていた。

この生徒会のメンバーに馴染めていないのも理由だ。遠坂凛はまだいいとしても、ラニとはまだ完全には打ち解けていないし、ユリウスとは目を合わせたくない感じだし、何よりレオとガウェインが苦手だ。間桐桜はいいとしても、臥藤門司はうるさいし、ワカメやジナコも聞き耳を立てているのだろうし。後ろにいる、アーチャーも含めて。所謂マイナスイオンが豊富な空間とはとても思えない。

――と、そんなことを考えているとBBがマイナスイオン発生器でも送りつけかねない。

そも生徒会に入るのだって乗り気ではなかった。だが、あれよあれよと生徒会室に引きずり込まれ、腕章を与えられた。とはいえ、それを頑なにでも拒否すればよかったのだろうが、しなかったのもマキナ。身勝手な行動もするが、ある程度は生徒会の意向に沿う。その主たる原因の一つは、やはり彼らに対する『負い目』もあるのだろう。彼らと違い、マキナだけが『二重契約』していたことも後ろめたいのだ。それが思わぬ形で晒される結果となったのが余計に気まずい。

 まてよ、――『二重契約』?
 そんなものしていたか?
 自分は、誰(あの人)と契約していた――?

 そんな記憶はない。
 それはそうだ、何故ならBBがその記憶を隠匿してしまったから。
 そもそもこの『二重契約』は『違法(ルールブレイク)』ではない。
 ただの『例外処理(イレギュラー)』だ。

ならば何故、そんな『負い目』など感じる必要がある?この感情はどうやって自分の中から湧きあがるのか?真相を辿ることができないのが擬かしい。そして、そんな例外処理をするハメになった理由、原因はもっとわからない。




「須江部とサーヴァントは、恐らくBBの手に堕ちたな」


ユリウスの調査報告の開始にマキナは顔を上げる。あまり血色のよくないユリウスが、一層疲れたように見える。しかし少なくともその仕草には一切滲ませていない。


「攻撃こそ受けなかったが…迷宮から離れようとする意思も見られない。どういう役割を担っているかは不明だが…いずれ戦わざるを得ないだろう」


その言葉に、既に静かだった場が一層静まり返ったように思えた。凛などは、息を飲み込み唇を噛み締めている。レオも矢張り同様に溜息を吐き、そして改めて現状を纏める。


「厄介ですね……須江部さんのサーヴァントは強力過ぎる。僕のガウェインやジナコさんのカルナ、或いはギルガメッシュなら対抗できるでしょうが…ジナコさんは僕たちに協力するつもりはないからカルナは使えない。ギルガメッシュもマキナさんのサーヴァントでない以上、積極的に動くとは思えない。寧ろ、“彼”が相手ならばギルガメッシュはBB側に組する可能性まである…!それに…須江部さん自身も高次元の魔術師(ウィザードだ。彼の固有結界『無限の超構造体(アンリミテッド・メガストラクチャー)』に囚われて しまえば迷宮の探索すら儘ならなくなる可能性もあります。」


あの、唯我独尊の暴君“ギルガメッシュ”が組するなんてことは、英雄王的に考えて有り得ない。それを可能にする相手は、恐らく彼の生前に一人しかいないのではなかろうか。まあ、その『一人』こそがここにいるから問題なのだが。今のところギルガメッシュは校舎内にいるようだが……まだ“彼”の出現を知らないのか、それとも既に知っていて動かないのか―…?

だが、もう知れてしまっているだろう。盗み聞きをしているわけでもないのだろうが(?)…どうやらギルガメッシュは、生徒会の動向を逐一把握しているようなのだ。今のところ生徒会の役には立たなくとも害を及ぼすことはなかったので、敢えて生徒会側で通信の秘匿をすることもなかったのだが…。


「それだけじゃない。岸波白野とセイバーも未だ行方知れずなのよ。彼女たちまで衛士(センチネル)と化しているなら……」
「忌々しき事態ですね……。“たられば”の話をしても仕方がありませんが、せめてマキナさんがサーヴァントとしての力を失っていなければどんなに心強いことか…」


ともあれギルガメッシュは、マキナ達が死滅しようと関わりがないと言っていた。ギルガメッシュは敵ではないにしろ、味方には絶対になりえない。


「BBにパッションリップ、メルトリリス、エリザベート、アーチャー…そして須江部さんのランサー。それに、もう一人のアルターエゴらしき存在も確認されている。これだけの相手を全て打ち倒さなければ、僕らに未来はありません。」


分が悪いなんてものじゃない。殆どが強力なサーヴァント。繰り広げられるのはワンサイドゲームでしかないだろう。マキナのサーヴァント能力の消失、これを一番歯痒く思うのはマキナ自身だ。この迷宮に取り戻すための手がかりがあるのならば、なんとしてでも、そして早急に探し出さなければならない。


「須江部真文についてはまだ結論を出すのは早いだろう。幾ら彼がBBに操られているとしても、マキナを害するような行動を取るとは思えない」


ここで紅い外套を纏う弓兵が、思わず口を出す。そしてそれにすかさず反論したのは凛だった。


「そんなのわからないでしょ。私やラニだって――…自分の意思とは反してあなたたちと戦っていたんだから。」
「勿論そうなのだが――…彼の場合は…」
「………」


アーチャーがそう言うには、それ相応の理由があるのだが。
―――須江部真文。間久部マキナの、無二無類の親友。

BBに操られているのであれば、無事とは言い難いかもしれないが、安否の確認だけでもできたのはよかった。彼のサーヴァントも含めてだ。

あのエリザベート相手に遅れを取るとは思えないが、彼らが餌食になっていなくて、本当によかったと心底安堵はしている。

だが、今度は恐らく自らが打ち倒さなければならないのだ。アーチャーには止められるだろうが、彼らに会いに行きたい。会って話しがしたい。


「アーチャー。私たちの命運は――現状、ほとんど貴方の肩に掛かっているといっても過言じゃないわ」


ガウェインはギリギリまで温存の方針。先にレオが行ったとおり、マキナはサーヴァントの力を失い、ジナコのカルナは使えない、ギルガメッシュも同様。ついでにキアラのアンデルセンは戦闘に不向き。となれば、消去法でアーチャーしか残っていない。


「貴方が何者で、どうしてマキナと契約をして、私達に協力しているのか。悪いけどここで説明してくれないかしら?返答如何では即刻マキナに契約を破棄させる必要があるかもしれない。貴方が信用できるのだと、今ここで証明してちょうだい。」


謎に包まれていたアーチャーの正体。誰かが聞かなければならないことだった。否、マキナも何度も問いただしたのだが、はぐらかされてばかり。ガウェインの目も厳しく光っている今、アーチャーは答えを迫られる。


「BBが言っていた…“貴方が昔マキナに仕出かしたこと”って何?アナタの真名は?マキナと関わりがあるなんて…最近の英雄ってことなの?」


凛が率先して聞くのは、勿論それが凛自身の利害に絡むことだからなのだが、どこか、マキナに対する過保護が見え隠れもする。少々睨むようにしてアーチャーの答えを待つ凛だったが、意外な者がその問いに答えたのだった。


[next]







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -