5分間見つめ合う
色素の薄い琥珀色の瞳の奥には、彼自身が持つ日輪刀と同じ燃えるような美しい赤色が秘められている。綺麗なアーチ状を描いたアーモンド型の目は大きく見開かれ、力強くこちらを見据えていた。
「5分間見つめ合わなければ、出られない部屋」
腕を組んでこちらを見下ろす煉獄さんの目は一切脇目逸らさず、私を見つめているのだけれどあまりの居心地の悪さに思わず視線を横へとズラしてしまった。
「よもや!」
晒さないでくれ!そう言って困ったように眉を下げて笑う煉獄さん。
このやりとりを先程も含めて5回程繰り返している。ただ見つめ合うだけなのだが、中々の難易度が高い。相手が煉獄さんなだけに。決して嫌悪感がある訳でもないし、彼が嫌いな訳でもない。けれど、何もかもを見透かしてしまいそうな程、真っ直ぐにこちらを見る煉獄さんの目と5分間も合わすと、ずっと、ずっと、ひた隠しにしていた彼への恋慕がバレてしまうんじゃないかと思うと、つい視線を横に逸らしてしまうのだ。
しかも好いた人と5分間も見つめ合うなんて、心臓がいくつあっても足りない。一瞬でも目がうと、ドキドキして動悸が治らないのに。
頬に熱が溜まるのが分かる。真っ赤になった顔を隠すように俯いた。
「す、すいません」
ああ。どうしよう。
すると、大きな手の平が私の両頬を優しく包んだ。少し強引に顔を上に上げられ、強制的に目を合わせられる。
「すまないが頑張ってくれ!」
きゅと口を横に引き結び、こくりと喉が上下した。先程よりも至近距離での煉獄さんの顔。私の顔を固定している手は離されず、ずっと頬に触れている。温かく、豆が潰れ固くなった手の平。
心臓が激しく暴れまわり、私の中で凄い音が聞こえていた。どうか、煉獄さんに、聞こえていませんように、と祈りながらただひたすら平常心を装う。耳まで赤くなった顔は隠せないけれど。
これ以上迷惑をかける訳にもいかないので、決して逸らさぬようにと、猛禽類を連想させる鷹のような金色の瞳を見つめた。
どこまでも、澄んでいる。意思の強そうな目力のある瞳は、甘い優しさを含んだ色を携えていて私を見下ろしている。ああ。やだ。そんな目でみないで。勘違いしてしまいそうになる。きっと真っ赤っかになっているであろう顔をするり、と不意に優しく頬を撫でられた。
「君は、愛いなあ」
目を細めて笑みを浮かべる煉獄さんの顔の破壊力は凄まじかった。ボン、と頭の中の色々な回路がショートする音が聞こえ、急激に体温が上がっていく。顔だけじゃない、もう身体全体が熱い。目を見開き、咄嗟に声が出ず金魚のようにパクパクと口を動かしていると、ふ、と煉獄さんが思わずといったように笑った。