さっきから視線を感じる。

書き物をしていた知念がふと顔を上げると、平古場がじっとこちらを見ていた。
顔になにか付いているんだろうか と思いきや、その視線は知念の手に注がれている。
何気なしに手を動かしてみると、平古場の視線もそちらに移動した。
じっと一点を見つめる彼はなんだか猫みたいだ、と内心面白くなり手を動かし続けると視線はそれを追う。

しばらく不毛な鬼ごっこを続け最後に知念が手を振ってやると、からかわれていたと気付いた平古場は気まずそうに視線を解いた。

「ぬーがよ」

「それはこっちの台詞やっし。わんの手がどうかしたか?」

知念が問うと、平古場は相変わらず視線を逸らし気まずそうに頭を掻きながら答えた。

「いや、知念の手っておっきいなぁって」

「そぉか?自分じゃよく分からんやしが。で?」

「……なんか、昔親父に頭撫でられたの思いだした」

心あらずといった感じで見つめていたのは、そういうことか。
可愛いとこもあるじゃないか、と知念は笑い 平古場の頭にそっと触れた。

「こんな感じ?」

「ふら……っ!別にやらなくていいやっし!!」

恥ずかしいから止めろと騒ぐ平古場の反応が面白く、頭を撫で続ける。
弟みたいだと微笑ましく思っていると、ふと別の視線を感じた。

「永四郎も撫でられたい?」

「……知念クンって結構イイ性格してますよね。遠慮します」

「じゃ、平古場の頭撫でる?」

返事の代わりに木手の口が「ゴーヤー」と小さく動いたのを見て、これ以上はふざけるのを止めた。



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