誕生日プレゼント、と目の前に出されたのはボリュームのある肉料理だった。

「ぬーがよ、これ……」

「あんくとぅ、誕生日プレゼントさー」

「THE・肉!って感じだばぁ……」

ポークソテーのようなものに野菜とトマトソースっぽいものがかかった料理は、美味しそうではあるがとにかく量が多い。
自他共に認める食の細さである平古場には少々荷が重そうだ。

「わんがつくったんばぁよ」

水をテーブルに置いた田仁志が喜々として言った。

「デブの手作りじゃでーじ太りそう」

「ごちゃごちゃ言わんけー!とにかくかめ!」

促され、フォークで肉を口に運ぶ。
こってりしてると思われた味付けは、思ったよりもあっさりしていて驚くほどに上品だった。

「ちょ…!これ、本当に田仁志が作ったんばぁ?!」

「ぬーよ?」

「やー、普段大雑把っつーかがさつなくせに、何でこんな繊細な料理が出来るんだよ」

失礼な奴、と言いながらも料理を褒められて田仁志もまんざらではなさそうだ。
平古場という男はお世辞を一切言わない性格だからだ。

「まーさん?」

「……でーじ、まーさん」

そんなに肉が好きなわけではないが、これは本当に美味しいと思った。
気付いたら、絶対完食出来ないと思っていた皿は空になっていた。

「最近、料理を作り始めたと裕次郎から聞いてはいたけど、ここまでの腕とは……」

「ただ食うだけのデブの時代は終わったんさー」

まぁ田仁志の家は飲食店だから手伝いなんかもしてるだろうし、才能もあるのだろう。

ごちそうさま、と言った後 平古場は先ほどから気になっていた事を聞いた。

「何でやー、わんにご馳走しようと思ったんばぁ?」

甲斐の様にいつも連んでる訳じゃないし、知念の様に付き合いが長い訳でもない。
どちらかというと言い争いが絶えない仲なのに、こうして2人だけで居て、その上おもてなしされるのは不自然だった。

「平古場はスタミナがないわけじゃないけど体脂肪少なすぎやんに?こないだの合宿で高校生を見た時、この先テニスを続けて行くにはこれじゃダメだと思ったんばぁよ」

確かに、年上とはいえ体格差で勝てないと思う者が多かった。それは平古場自身自覚している。

「やーの事はわじわじする事も多いけど、これからもこのメンバーでテニスをしていきたいから……」

「だから誕生日の今日を機に、ちゃんと食えって?」

「やんどー」

「ふらー。わんはこんなデブになるのは嫌さぁ!」

でも、これはまた食ってみてもいいかな。
空の皿とフォークを見て小さく呟き微笑んだ平古場に、田仁志も苦笑した。

「ホント、生意気な奴やっさー」



☆☆うまりびかりゆしやいびーん、凛! 3月3日☆☆


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