*甲斐→凛? +他メンバー
「凛、しちゅん」
「ウザイ」
「しちゅんよ」
「キモい」
「……知念クン、田仁志クン……何なのあの二人」
皆より遅く部室に辿り着いた木手は、このよく分からない微妙な雰囲気に眉を潜めながら、傍観者の二人に訊ねた。
「あー、なんかバレンタインに平古場からチョコ貰った(正確には奪い取った)からお返しって」
「甘い言葉を送ってるらしいさー」
「お返しと言うよりいやがらせですね、アレは」
聞けばかれこれ30分は繰り返されてるやりとりらしい。
「しっかし凛、我慢強いやー」
「わんだったら蹴り飛ばすところさー」
「ホントにね」
「感心してねーでなんとかしれ!!」
周りで好き勝手に言っている木手たちを、平古場が忌々しそうに睨む。
「力ずくで止めても、全く効果ないんばぁよ!」
どうやらとっくに武力に訴えて止めようと試みていたらしい。
壊れた玩具の様に繰り返す甲斐に、相当ストレスを溜めている様だ。
「じゃあ、一回受け取ってあげればいいじゃない。そうすれば気が済むかもよ」
「んな事したらあにひゃーさらに調子づくさぁ!他人事だと思って……!」
「そうだよ。他人事だもん」
ニヤニヤと笑う木手を、若干涙目で睨む平古場。
他人の災難を素直に笑える木手は、子供っぽいのかある意味大人なのか。
ただ見守る田仁志と知念には判断し兼ねる。
「……慧君、なんか凛が気の毒になってきたさー」
「耐えれ。平古場には悪いけど、あれに巻き込まれたらわったーも辛い目に合うさー……」
面倒事には首を突っ込まない方が良い。
二人に出来るのは、早くこの状態が終わる様祈るだけだった。