*甲斐⇒田仁志
それはいつもと違う声色だった。
「慧く〜ん……」
珍しく元気無さ気な声に振り向くと、叱られた犬の様にしょんぼりとした裕次郎がいた。
尻尾と耳があったら、確実に垂れ下げているだろう。
「ぬー、永四郎にでも怒られたんばぁ?」
「あらん。そーじゃなくてわん、慧くんの秘蔵のお菓子つい食べちゃったんさぁ……わっさいびーん」
「しんけん?」
秘蔵の菓子と聞いて顔色が変わった俺を見て、裕次郎がしてやったりと言う顔をした。
「なーんちゃって!わっさん、今のゆくしだばぁ」
今日はエイプリルフールだよーと笑う。
「良かった。本当だったらいくら裕次郎でもギタギタにしてたところさぁ」
「うぇっ、しんけん!?」
「ゆくしだよ」
騙したお返し、と言うと裕次郎が笑う。
「良かったー、わん一瞬ビビッちまったさー」
「……まぁ、そこまで含めて嘘なんだけどな」
「!!」