「今日わんの家誰も居ないから泊めて!」と半ば強引に平古場家にお邪魔した夜。
夕飯をご馳走になり風呂も済ませ、特にこれといってすることもないまま怠惰な時間を過ごす。
部屋に無造作に積んでいた漫画を読む振りをしながら、俺は凛を盗み見た。
ベッドでうつ伏せの状態でファッション雑誌に目を通している金髪は、時折眠そうにあくびをする。
きっとこんな時間もあと少し。
時計が刻む音を意識しながら、少しづつ時が動くのを待ち続けていた。

AM 0:00

カチリと音を立て時計の短針と長針がピッタリと重なった瞬間、枕元にあった凛の携帯が音を奏でる。
これまで静かだった空間に響くメールの着信音に少しびっくりしながら、凛が携帯を手に取った。
その間にまた一件。
携帯を操作する隙も与えず次から次へと届くメールに困惑する凜に、それをニヤニヤしながら見守る俺。
しばらくして静かになった携帯を開き、凛は訝しげにメール履歴を見た。

「永四郎に田仁志、知念まで……ぬーやがこれ」

部活連中の名前が連なる。一つ一つ開いて見る内容は、それぞれの個性はあれどほぼ同じ内容だろう。
ひとしきり目を通したであろうタイミングを見計らって、皆から少し遅れて俺も自分の携帯の送信ボタンを押した。
電波を経由し、少し時差を伴って鳴る凛の携帯。


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sub:無題
from:裕次郎
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俺の考えたサプライズ楽しんでもらえた?
凛をビックリさせようと思って、皆で一斉にメール送ってみた!



凛、誕生日おめでとう!!!!

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画面から顔を上げた凜は、呆れたようにため息をつき、そして表情を緩ませた。

「やったー、ホントふらーだな」


計画の後始末として『サプライズ大成功!』と書いたノートの切れ端の写メを皆に送る。
一段落終え床に置こうとした俺の携帯が、静かに震えた。

『メールを一件受信しました』

送信者は凛。

君たちこんなくだらない事企んでる暇があったら練習しなさいよ。

と憎たらしい(しかも微妙に木手口調)文面に、いつ撮ったんだとツッコミたくなる晴美の激怒した写真が添えられている。

「どっちがふらーだよ!」

そんなくだらないやりとりに、どちらも腹が痛くなるくらい笑った。


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