「で、やーはいつから気付いてたんばぁよ?」

貰ったチョコレートを食べていた知念は、モゴモゴとしばらく口を動かしてから平古場に向き直った。

「怒らない?」

「は?」

「実は一週間前から。」

一週間前──様するにバレンタイン当日の事である。

「はぁ!?ぬーやがそれ!一週間ずっと黙ってたんかよっ!!」

「だから怒らないか聞いたあんに……」

バツの悪そうな顔をすると、知念はそのまま話し始めた。

「最初はなんとなくだけど、まぁ時期柄そういうことかなぁって。やー、普段はカバンとか煩わしいって登下校以外あんま持ち歩かんし。二、三日経って確信はしたけど、平古場が用意したものなのか誰かに頼まれた物なのかはさっきカマ掛けるまでわかんなかったんばぁよ」

「……要するに思いっきり不自然だったと」

「やさ」

頷く知念を見て平古場は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
結果的に渡すことは出来たものの、やはりもっとスマートに渡せれば良かったのに。

「ま、まぁ他の奴は気付いてないっぽいから……」

そんなフォローも今は痛いだけだ。
落ち込む平古場を見て苦笑しながら、知念が再び口を開いた。

「わんからも二つ質問があるんやしが」

「ぬー?」

「このチョコの意味は?」

「────」

思わず言葉に詰まってしまった平古場が知念を見ると、思いの外真剣な瞳と目が合った。
友チョコか、はたまたもっと別の感情が込められた贈り物か。
どう答えるか少し考え、平古場は口を開いた。

「たぶん、やーと同じだよ」

我ながら狡い答えだと思ったが、それで満足したらしく知念が微笑む。

「で、もう一つは?」

「こういう場合ってホワイトデー、どうすればいいかやー?」

「くだんねー!」

この質問には答えないでおくことにした。
どうせ似たもの同士なんだ。同じ行動を取るに決まっている。
答え合わせはまた来月。


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