春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだ。

誰も居ない屋上で一人、心地よい風に吹かれながら平古場はのんびりとした時間を過ごしていた。
授業開始のチャイムはとうになっていたが、そんなことはどうでもいい。
一人では持て余す程の広いコンクリートに寝そべり、空を見上げた。
こんな日に教室に篭って退屈な時間をすごすなんて、もったいなさ過ぎるじゃないか。
緩やかな空気と時間の流れに、思わずうとうとしてしまう。

屋上に来てからどれくらい経っただろうか。
たった一人のこの空間に、人の気配がした。足音が段々と近づいてくる。
こんな時間に屋上にくるのは、おそらくあいつだろう。
そう思い身体を起こさずにいると、案の定聞こえてきたのは聞き慣れた声。

「あ、やっぱここにいた」

甲斐が嬉しそうに平古場を覗き込む。

「教室入る前にちらっと見たら凛がいないからよ、そのまま屋上まで来ちゃった」

「やー、今登校してきたんばぁ?」

「今日は良い天気あんに?おもわず散歩に力入っちまって、でーじ疲れたさー」

起き上がりふと時計を見ると、既に3時限目を回っている。
相変わらずの遅刻癖だと呆れるが、こうして授業をサボっている今日は 平古場も他人の事は言えなかった。
大きなあくびを一つし、甲斐が平古場の横に腰を下ろす。

「しっかしココ、すっげー気持ち良いなー」

「おー。わんも教室戻るタイミング失って、ずっとここにいるんさー」

「ホントだ。凛、お日様の匂いがする」

「!!」

いつの間に至近距離に寄ったのか、甲斐は平古場の首元に顔を埋める。

「ちょ……!ふらー裕次郎!暑苦しいから離れ、ろ……?」

抱きつくような体制のまま動かない甲斐を引き離さそうとするが、あろうことか甲斐は既に寝息を立てて眠っていた。

「一瞬で寝るって……のび太かよ、やーは……」

そんなに疲れる程散歩すんなよとか、寝るんなら人を巻き込むなよとか、言いたいことは山ほどあれど、眠っている人間には何を言っても無駄な訳で。
何より、甲斐の体温の所為か 平古場自身にも眠気が襲う。
仕方が無いとため息を一つ付き、そのまま身体を床に預ける。
次に目が覚めるのは何時だろうか、と思いながら その重くなった瞼を閉じた。


オマケの春眠


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