日差しが強くいつもより暖かい今日、油断すると睡魔に誘われるままに眠りについてしまいそうになる。
何もしていないのに額にうっすらと汗が浮かぶ。
ちら、とそんな暑さもものともせず、涼しげな顔でソファーに沈んでいる黄瀬を見ると真剣に本を読んでる姿が目にはいった。
(睫毛なげぇな…)
そういやこいつモデルだったな。普段があんな犬っぽいから忘れてたけど。
本に夢中になってこっちに気付かないのをいいことに、じろじろと顔に視線を投げ掛けるが、やはり反応が返って来ないから楽しくない。
いよいよ、することもなくなり今度こそ襲ってくる睡魔に逆らわず、瞼を下げた。
目を覚ましたのは肩に重みを感じたから。その方向へ視線をずらすと、傷んでいない綺麗な金髪があった。
すーすー、と規則正しい寝息を立てて寝ている黄瀬の鼻を摘まむ。穏やかに寝ている顔がなんだか無性にムカついたから。
フガッという何とも言えない声を上げて勢い良く目が開いたと思えばいつもみたいにきゃんきゃんと吠えだす。
「な、なにするんスか!折角気持ち良く寝てたのにー!」
「うっせ、お前の寝顔苛つくんだよ」
「なんっスか、それ!モデルの寝顔なんて貴重っスよ!」
「あー、はいはい」
まだ耳元でごちゃごちゃ言ってくる黄瀬の頭を軽く叩き、立ち上がる。
時間はもう夕方になっていて。結構寝たな。
昼よりは幾分かは涼しくなったけれど、それでもまだ暑い。
大人しくならない黄瀬の腕を引っ張り立ち上がらせる。
「おい。1on1、するぞ」
命令口調なのは、それはこいつが断るなんてことをしないと知っているからで。
さっきまできーきー言ってたのが止まり、口も目も大きく開かれている。いつもと同じ、間抜け面。
俺から誘った時は大体この顔をしてから、次にくしゃり、という効果音が似合いそうな笑顔を見せる。
今日もそれに変わりはなく、
「ほら、行くぞ」
「はいっス!」
太陽を連想させるかのような顔で黄瀬は笑う。
2012/07/22