最近、変なことが起こっている。
その変なこととは、1ヶ月ほど前に入部した黄瀬涼太が大いに関係していた。と言うか、ほぼ黄瀬にあると言ってもいい。
入部してから毎日、
「青峰っちー、わんおんわんやるっス!!」
と、何故か見える尻尾をぱたぱた、犬耳をひょこひょこさせ、走り寄ってくる黄瀬は青峰にとっても良い練習相手だった。それに憧れっス!と尊敬してますオーラを全面に出して言われれば、悪い気はしない。寧ろ、好感を持てた。
暇さえあれば黄瀬と1on1する。そんな日々を送っていると、変化は唐突に訪れた。
まず、黄瀬の夢を見るようになった。最初はただ、最近結構一緒にいる事が多いからだと思っていたが、流石に黄瀬を押し倒している夢を見ればそうは言っていられない。次に肩と肩が触れ合うだけで体温がぐわっと上昇し、ふにゃりとした笑顔を見ると鼓動が速くなる。一体どうしたものか。
青峰は頭を悩ませているのだが、一向に解決法が見つからない。何せ小さい時から1にバスケ2にバスケ、3、4バスケで5もバスケだった青峰は勉強する時間があるのならボールに触れていたので脳みそは空っきしなのだ。そこで、脳をフル回転して絞りに絞った結果、巨乳で可愛いと専ら評判の幼馴染み、桃井に相談するということになった。
桃井に、変化の内容と黄瀬を直視出来ない事を伝えると瞳をきらきら輝かせて
「大ちゃん!それはね、恋っていうの。大ちゃんはきーちゃんに恋してるのよ!」なんて言われた。その言葉は的確で、今までもやもやしていた青峰の心を晴らし、胸にすとんと収まった。その日から青峰と理性の闘いが始まったのだ。




「ちょっと青峰っち!聞いてるんスか?」

むぅ、と唸り唇を尖らせて軽く睨む黄瀬だが、青峰からすれば全く恐くない。寧ろ完全に、煽っているとしか思えないのだ。
(くっそ、何なんだよこいつ可愛すぎだろ。無意識か?確信犯か?どっちにしてもあざとすぎんだよくそやろう!マジ犯してやろうか、今ここで!!!)
内心荒ぶっているものの、顔は眉間に皺を寄せて、小さい子が見たら泣き出し、一般人も決して近寄らず、避けて通るだろうという様な顔をしていた。表情に出さないようポーカーフェイスを保っていたかったが無理だったので、せめてにやけないようにしようとした結果がこれだった。黄瀬は青峰のそんな顔を見慣れているのか怖がりもせずいつも通りだ。

「…お前、ちょっと向こう向けよ」
「え、ちょ、うわっ」

黄瀬の顔を鷲掴み、反対側を向くよう勢いよく動かした。ふぎゅ、とモデルらしからぬ気の抜けた悲鳴が聞こえたが無視。普段なら盛大に馬鹿にしてやる所だが今はそんな事をするだけの余裕もなかった。理由は簡単。予想以上に黄瀬の肌がすべすべで頬がふにふにだったからである。

「黄瀬ぇ…」
「なっ、なんスか!?」

いきなり地の這うような声で呼ばれ肩をびくりと揺らす黄瀬を青峰は鋭い目付きで睨み付ける。

心を落ち着かせようとした行動が、逆に動悸を激しくさせてしまった。
どくどくと脈打つ鼓動がこのままでは黄瀬に伝わってしまうんではないかと青峰の顔には似合わず乙女な思考だ。
頬はほんのり赤く染まっていたが、幸いなことに肌が黒いので気付かれていないだろう。


「もう、最近の青峰っち変っスよー?」

そんな青峰の心情を知ってか知らずか、むぅ、と頬を膨らませ、上目で見てくる黄瀬に青峰は固まってしまった。
そして追い討ちをかけるように黄瀬は青峰のセーターの裾をちょこんと掴んでグイッと軽く引っ張ったのだ。これは正に止めの一撃といっていいだろう。

現に青峰は声にならない叫びを上げ、倒れていった。






あとがき
華南さんリクエストの黄瀬が可愛くて仕方がない青峰とのことでしたが…

大分、というか結構お題からそれてしまった気がしますすみません…


改めて華南さん、リクエストありがとうございました!

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