ぴちゃ、とわざとらしい水音が耳につく。まるでわたしの反応を楽しむかのように這わされた舌は、ぬらぬらと唾液をまとわりつかせながらわたしの肌を滑る。執拗に同じ場所を舐め続けるそれに、びくりと身体が跳ねてしまうわたしもわたしだけれど。
は、と乱れた呼吸を噛み締めると、それに気付いたのか胸の突起を舐める行為を止め、彼はふと顔を上げた。綺麗な空色の瞳はわたしを捉えると、なまえさん?と名前を囁き柔らかく細められる。ずるい、そんなふうに微笑むだなんて。


「熱、上がっちゃいました?」
「……それ、テツくんが言うせりふじゃないよ」
「まあ、僕が上げるような行為をしてますからね」


今日は看病してくれるって、言ったのに。ちょっぴり拗ねてやろうと唇を尖らすと、テツくんはほんの少しだけびっくりした顔をしてから可笑しそうに喉を鳴らして笑った。
風邪を引いて、テツくんに看病を頼んだわたしがまちがっていたのかも。普段は純真無垢そうな顔をしているくせに、テツくんはやっぱり健全な男子高校生だ。火神くんか誰か知らないけれど、テツくんにこんな不健全な知識を吹き込んだことがそもそもの始まりである。おかげさまで、こんな体調を崩した日にさえ迫られて、一向に治る気配がしません。
こほこほと咳をすると、テツくんは枕元にあらかじめ用意してあったペットボトルのお水を自分の口に含み、それから屈み込んでわたしの唇へと自分のそれを押し付ける。テツくんの口内の体温で、ぬるくなったお水がわたしの口へと流れ込んできて、不覚にもどきりと心臓が跳ねる。


「…その顔、いやらしいですね」
「っテツくんの、いじわる」
「誘い文句にしか聞こえませんよ」


つつ、とテツくんの指がわたしのおへその辺りを辿る。くすぐったいその感覚に身をよじると、テツくんはそれを待ち構えていたようにわたしの太ももの間へと指を滑り込ませた。テツくんの愛撫ですっかりとろけていたそこは、彼の細い指なんかあっという間に飲み込んで、腰に伝わる痺れたような甘い感覚に思わず悲鳴を上げた。
なまえさん、とわたしの名前を囁きながら、テツくんはわたしの中で指を動かす。くちゅりと響いた粘稠音がとても恥ずかしく耐えきれなくなって首を振ると、テツくんはわたしの髪を撫でてそっと微笑む。


「いやらしい顔、してます」
「も、やっ…テツくん。指、抜い、て……あっ、」
「だめですよ。だってなまえさん、まだ気持ちよくなってないでしょう」


ひどい。そんなのテツくんが一番、よくわかっているくせに。
焦らすように指をゆっくりと動かすテツくんは、きっとわたしがもう我慢できないことを悟っている。それでも自分からそれを言い出さないのは、テツくんがいじわるだからなんだと思う。執拗にわたしの弱いところを攻めるテツくんの指に、何度か意識が遠のきかける。そのたびに指を入口まで戻しわたしをまるで呼び戻すかのように笑うテツくんは、本当に底意地が悪い。ちょっとだけテツくんを睨んでやると、きょとんと目を丸くした彼はわたしから指を引き抜きぺろりとそれを舐めた。


「そろそろ、僕もいいですか?」
「…今さら言うなんて、ひどい」
「なまえさんがあまりにも色っぽかったもので」


楽しんでしまいました。
ぷち、とシャツのボタンを外しながらテツくんは笑う。熱のせいかぼんやりとする頭でそれを見つめていると、少しだけ汗ばんだ前髪を払いテツくんはわたしに覆い被さりふと口付けた。もう、風邪うつって部活休むことになったって知らないんだから。
珍しく浅いキスのあと、ふとテツくんが上半身を起こし腰を落とした。布越しでも分かる大きくなった彼に思わず顔が熱くなってしまって、困ったように笑うテツくんから目を逸らす。なまえさんが悪いんですよ、と低く囁いたテツくんの声に薄く目を開けると、色白の彼の肌が視界に入って不覚にも見惚れてしまった。ほんとうにずるい。こんなふうに見せつけられたら、拒否なんてできるわけがないのに。


「…テツくん、風邪うつっても知らないから」
「そうしたら、またなまえさんが看病してくださいね」
「バニラシェイクは買わないよ」


それは困ります。本心なのかどうかは定かじゃなかったけれど、わたしの中に深く沈められた彼のものに、もう考えることさえどうでも良くなってしまった。
襲ってくる眩暈のするような快感に身悶えしながら、目の前の空色の髪に口付ける。そうして彼のものをもっと求めようと、その細い背中に抱きついた。




(震える微熱)








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