「あ、あの」

「ああ気にすんなよ。いつものことだし」

「じゃなくて、その…この状況は一体…」


よ、よし説明しよう。現在わたしの左側に座りニコニコとしていて、あろうことか肩を抱いている色黒のお兄さん。お名前はシャルルカンさんというらしい。そしてわたしの右側で鼻歌を歌いながら腕にしがみついているのがピスティちゃん。その斜め前の椅子にはちょっと拗ねているのかそっぽを向くヤムライハさんが座っていて、そして、


「紹介します。向かって左側から、ヤムライハ、マスルール、スパルトス、ドラコーン、ヒナホホ、そして私がジャーファル。で、貴方にまとわりついてるのが、シャルルカンとピスティ。この国を守る八人将の者たちです」

「は、はぁ」

「さっきはごめんねナマエ。ついカッとなっちゃって」


ヤムライハさんはジャーファルさんにやられた大きなたんこぶを摩りながら(痛そう)わたしに謝る。す、素直に頷けない。はは、と乾いた笑いを返すと、ヤムライハさんはきっとシャルルカンさんを睨み付け大きな帽子を被り直す。怒っても綺麗だなんて、そんなの反則だ。
それにしても、他国でも噂を何度も耳にしたことがあるくらい有名なシンドリアの八人将が、こんなに近くでお目にかかれるなんて!すごい、すごいよー!八人将さんたちを端から一人一人見渡すと、何だか妙に緊張してしまって心臓がきゅう、となる。あ、人でなし男は別です。


「何だか嬉しそうだな、ナマエ」

「当たり前じゃないですか!八人将さんって言ったら全国でも有名な方々ですよ!お目にかかれて光栄です!」

「嬉しいこと言うじゃねーか!よーし、今日は俺と飲みに行くぞ!」


シャルルカンさんはにこーと笑ってわたしの肩を更に引き寄せた。その拍子でシャルルカンさんに抱かれる体制になって、う、うっひゃあ。そしたらピスティちゃんが右側からわたしの腕を引っ張って、「ナマエは私と出かけるんだからだめだよー!」と対抗し始めた。ま、また喧嘩が勃発してしまう…!


「あ、あのわたし!せっかく皆さんと会えたんだし、色々お話聞いてみたいなー…なんて」

「そういうことなら、今日は謝肉宴だな!ちょうど先刻に南海生物も上がったことだし!」

「おいナマエ行くぞ、今日は飲むぜー!」


わたしの肩を抱いたままシャルルカンさんは立ち上がってそりゃもう嬉しそうに笑ってた。いや、ニヤニヤしてた。お、お酒…好きなんだな…。というか、謝肉宴とは何だろう?
ずるいー!と言いながらピスティちゃんが後を追いかけてきて、その後ろからヤムライハさんが駆け寄ってきて、ヒナホホさんが強引にスパルトスさんを引っ張ってきて…、ありゃ、わたし何だか歓迎されてる?嬉しい…?
嬉しいんだけど、その、シャルルカンさんの腕の力が大層強くて、さすが八人将さんって感じで、いたたたた!


「シャ、シャルルカンさん痛い!肩痛いです!」

「けちけちすんなナマエ!肩の一つや二つ!」

「いやっでも痛っ、ぎゃー!」


シャルルカンさんが上機嫌でわたしの肩をばしばし叩くから、もう笑ってられなくて半泣きになってたら、突然お尻にそわっと違和感を感じた。思わず鳥肌が立って恐る恐る振り返ったら、「と、鳥?」な、な、なんかお尻に大きい鳥が!



「え、なんで鳥が!うわぁ浮いた!ひえぇ!」

「こらピスティ!こんなところで動物使うな!」

「シャルうるさーい!悔しかったら飛んでみろ!」


いや、あの、喧嘩しないで…!ていうか降ろして…!どんどん離れていく地面で叫んでいるシャルルカンさんたちに助けを求めて手を伸ばしたけど、当然の如く届かなくて泣きたくなった。
そうこうしている間にも、ゆらゆらと不安定に鳥が揺れて、思わず胃から込み上げてきたものを必死に堪えながら、わたしはピスティちゃんが呼んだ鳥に落とされまいとしがみついていた。な、なんか、八人将さんって…すごい人たちなんだけど、とんでもない人が多い気が、す、る……


「あれっナマエちゃん?気失ってる!?ナマエちゃーん!」

「ばかお前っ早くナマエ降ろせ!ジャーファルさんヘルプー!!」







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