クリームソーダに溺れる

今日は二年の家庭科で調理実習があったらしい。特別教室の並ぶ棟で音楽の授業を受けていた律禾も教室までの帰り道。授業の一環だろう、あかしろきいろ…思い思いにラッピングされたそれを脇に抱えきゃっきゃと走り去る女子生徒を何人か見ていたし、バターのいいかおりには食欲をそそられた。(どうやら作ったのはスコーンのようだった。)

そして放課後。自給自足、自分で作ったものを自分で食べる男子とは裏腹に女子はそれぞれの想い人へできあがったものを渡している。甘いかおりが充満したそこで彼女らは、まるで宇宙の星がすべて弾けたようなそんな笑顔を浮かべていた。今や学校の有名人集団であるサッカー部を率いる円堂の周りにも人垣ができている。去年の自分の調理実習のときは彼にしつこく彼にせがまれたものだと、去年とは180度変わった風景を横目で見ながら校門まで歩き出したところで見なれた顔を見つけた。正確に言えば、なんだか揉めているらしい黄色い声の人だかりに目をやったところで彼の淡い黄色の瞳と瞳がかちあった、のだが。

「白雲くん!」
「………律禾先輩?」

白雲蓮、数週間前に屋上で出会ったかわいい後輩である。彼もまた、数人の女子生徒に囲まれていた。中性的ではあるが整った顔立ちをしてる。その容姿からして、もてるのだろう。そんな彼の顔は今、あからさまに歪められていた。どうしたの?律禾が尋ねると、若干トーンを落としたいろで蓮が吐き出す。うむ、要約されたそれによると彼が作った焼き菓子をほしいと言った同級生が数人いたらしい。実にわかりやすい。さてどうしたものかと、律禾は目を細めて女子生徒の方へ向き直る。

「あのね、」
「は、はいっ!」

一言、口を開けばそのうちの一人がどこかうわずった返事をした。

「白雲くんの、実は俺が先に貰う約束してたんだよね。………だめ?」

だめ?とは、貰っていいか、だめかということだろう。しゅんと首を傾げた律禾に返事をした女子がこくこくと頷く。後ろの女生徒も、それに続いた。

「行こっか?白雲くん。」

行きたいとこあるんだけど着いてきてくれる?悪戯に笑みを浮かべる律禾に蓮は小さいため息を吐いた。



蓮くんと律禾!
泡ちゃんはぴばでした!


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