暁実が315プロ所属アイドルになるまで
2014/11/02 15:55

【登場人物】

夢辺郁子(むべかおるこ)
14歳。暁実の双子の妹。重度のアガリ症。この話では主人公。

夢辺暁実(むべあけみ)
14歳。郁子の双子の兄。“るん”という名前で男の娘アイドルをしている。

柿本李一(りいち)
中学二年生。夢辺双子の幼なじみ。





舞台袖、震える手を握って、目を瞑る。いつもは意識しないはずの呼吸すら、今の郁子には上手くできなかった。

いつまでたってもこのままじゃ、いけない。考えてなかったわけじゃない。むしろ、たくさんのファンの前で、きらきらを振り撒くアイドルの《るん》がステージに上がるたび、いつもこうやって考えていた。それは舞台袖だったり、あるいはモニター越しにだったりしたけれど。

あーくんだって、自分の思い描くやり方があるんだ。それに、ずっと嘘をつき続けたらきっと、壊れてしまう。頭ではわかっていても、こわかった。悩んで、苦しんでる双子の兄の姿を見ても、それでも、郁子にとってスポットライトの当たる場所に踏み出すことは、恐怖だった。失敗は、いけないことだと、そうずっと思ってきた。

『なにがあっても、俺は暁実とるんちゃんのファンだから!……失敗しても、だいじょうぶ』

幼馴染の彼は、そう言ってくれた。あーくんはいつだって、自分のことを守ってくれた。それがわかってない昔じゃない。だから今なら、きっとだいじょうぶ。あの歓声の中にだって、ほんとのことを持っていける。

「みんな!今日はるんちゃんのライブにきてくれてありがとー!最後まで楽しんでいってほしいな!じゃー最初の曲、いくねー!」

イントロが流れ出す。自分で考えて、あーくんに詞をつけてもらって、ずっと歌ってきた曲だ。アイドル《るん》の、顔とも言える曲。マイクを手に取って、一歩、暗いところから進み出す。なにも言わず無茶苦茶にして、ごめんね、あーくん。
歌い出し、会場がざわめく。《るん》も見せたことのない、びっくりしたって表情を浮かべてた。けど、歌えてる。だいじょうぶ。新しい《るん》に、なるのだ。

「……急に、出てきてごめんなさい!わたしは、夢辺郁子といいます!《るん》の双子の妹です!」

声が、震える。暖かい色のライトに照らされてるここだけが、寒い。けど、身体の奥は、ふつふつとなにかがわきあがってくるように熱い。
話さなきゃならない。ほんとのわたしはアガリ症だってこと、こんな大きな舞台ではダメダメになっちゃって、ずっと暁実が代わりをしてくれてたってこと。

「……けど、みなさんにとって、《るん》が暁実だってことはわかってます、だからわたしは夢辺郁子として、1からがんばりたいって…!」
「…………郁子」

あーくんが、ひとつ前へ出る。

「この通り、僕はファンのみなさまを騙し続けてきました。ほんとうの《るん》は僕じゃありません。」



…………的ななんやらがあって暁実は引退しようとするんだけど、ファンからのやめないでーって声と、あとやってるうちに心境の変化みたいなのがあって離れがたくなって、男の姿で再デビューすることになる→315プロへって流れ。この話の前日前々日くらいに僕はいつまで郁子のかわりをすればいいんですか…!みたいなこと言って、それを郁子に聞かれてそう。力尽きたので続きはそのうち…!


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