カヤトとノギト
2014/08/16 01:50

夢を見る。見ていられない、目を逸らすことなんてできやしないのに、それを願わずにはいられない、昔の夢である。
下手くそなギターの音と、下手くそな歌。いい歳をして『夢』を見る男と、幼いころの笑顔の自分。この夢を見た次の日は、いつも気分が悪くて、喉になにかが引っかかったような感じがした。

「うわ、兄貴機嫌悪い?」
「……そう思うなら聞かないでほしーんですが」

朝一番、ホワイトボードに書き込まれたそれぞれの予定を確認する。今日の予定、明日あさっての予定。変更があったものは赤で書くことにしてるから、ないということは特別準備することもないのだろう。昨日は確か自分の方が遅くまで予定があったから、朝ご飯の当番はカヤトだったと、キッチンの方に視線をやった。

「ごめん、寝坊したから今から作る。簡単なものだけどいい?」
「ありがとーございます」
「いえいえ、どーも」

レタスをちぎる音、卵を割り入れる音、安物のベーコンがフライパンで跳ねる音。あと、トーストを焼くオーブントースターの微かな機会音。こういう音は、嫌いじゃない。目を瞑って、そのかたちをなぞるように確かめる。あんな夢を見たからか、昔よく聞いた音にとても似ているような気がする。

「兄貴さ、叔父さんの墓参り、今年も行かねえの?」
「…………」
「兄貴、」
「……行きませんよ、そんなもん」

次の予定は四時間半後、あと少し、嫌な夢を見なくなるまでは少し上書きしたい。

続かない☆〜(ゝ。∂)


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