開幕を告げるリールA
「リボーン、荷物はこれで全部かしら?」
「ああ。必要最低限な物は向こうにあるからな」
ボルサリーノのソフト帽に、黒のスーツに身を包んだ彼の名前はリボーン。世界最強のヒットマンであり、イタリア最大手のマフィアグループ・ボンゴレファミリーの次期十代目ボスである、沢田綱吉の家庭教師を務めていた。
そんな彼を、沢田宅の玄関先で見送っている彼女の名前はビアンキ。フリーの殺し屋にしてリボーンの四番目の愛人。ボンゴレ十代目ファミリーの嵐の守護者・獄寺隼人の腹違いの姉である。過去にツナを殺そうとしたこともあったが、今となってはいい思い出である。
「留守のことは任せたからな」
「ええ。彼女たちに宜しく伝えといて」
リボーンは頷くと、ボルサリーノを深く被り直して、足元に置いてあった鞄を持ち上げた。
ピカピカに磨かれた靴を履き、玄関のドアを開けようと、ドアノブに手を伸ばそうとした刹那――ドアがひとりでに開いた。
「うわっ!? ……って、なんだリボーンか」
「なんだとは失礼だな、ダメツナ」
「いつの話だよ」
外からドアを開けたのは、ボンゴレファミリーの次期十代目ボス・沢田綱吉だった。
真新しい制服に身を包んだ彼は、つい先日高校生になったばかりで、並盛高校に通っている。時間帯からして、学校が終わり、まっすぐ家に帰ってきたようだ。
彼はふと、リボーンの持っている鞄に目を向けた。
「ずいぶんと大荷物だな」
「今からイタリアに行くからな」
「イタリアに帰るのか?」
「用事で帰るだけだ」
「仕事か何かか?」
リボーンは質問の返事の代わりに、意味深の笑みを浮かべた。
ツナは意味がわからずに首を傾げたが、リボーンは特に気にする様子もなく、ビアンキの方に向き直った。
「行ってくるな」
それだけ言うと、彼は今度こそ家を出た。
ビアンキは彼が見えなくなるまで見送り続けたが、ツナはさっさと家のなかに入っていった。
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