Thorn of revenge | ナノ
ラグの中でコーヒーを、A

ツナside.

 二人の口喧嘩をどうにか終わらせて、ハルについて行くこと約五分。カフェというくらいだから並盛商店街の方だと思ったのに、まさかの住宅街を歩いている。

「おい、本当にこんな所にカフェなんかあんのかよ?」
「もちろんですよ! 何回も行ったことがあるんですから」

 せっかくだから、ということで獄寺くんと山本も一緒に、ハルの幼馴染みがバイトをしているというカフェに向かうことになった。

「あそこです!」

 ハルの指差す方を見ると、アンティーク調の家が一軒建っていた。特に目を引くような看板はなく、急いでいるとつい見落としてしまいそうな程だ。店の入口前に手書きのメニューが書かれた黒板がなければ、そこがカフェだとは気付かないかもしれない。

「さあ、ツナさん! 中に入りましょう!」
「勝手に十代目を連れて行くんじゃねえよ!」

 ハルが俺の手を取ってクリーム色の扉を押すと、カランカランと来店を告げるベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

 近くのテーブルを拭いていた女の人が振り返り、にこりと笑って声を掛けられた。

「あ、ハルちゃん! いらっしゃい」
「みのりさん、こんにちは!」
「後ろにいるのは、ハルちゃんのお友達かな?」

 みのりさん、という人の視線は、ハルから後ろにいる俺たちに向けられた。
 二の腕辺りまでのオレンジ色に近い茶髪。少し色素の薄い灰色の目。身長は低くも高くもなく平均的で、少し日本人離れしているけど、とても可愛らしい人だった。

「高校のクラスメイトです!」
「初めまして。「-CAFE SUITE-」で働いている楠本みのりです」
「山本武っす」
「……獄寺隼人だ」
「俺は――」
「ツナさんは、ハルと将来を誓い合った仲です!」
「……は?」

 二人の自己紹介が終わって、俺も自己紹介をしようとしたら、ハルの途中で遮られた上に、力いっぱい強く抱きつかれた。
 いやいやいや、俺がいつハルと将来を誓い合ったんだよ!? ハルの被害妄想が年々酷くなってる気がするんだけどっ!

「アホ女! 勝手なこと言ってんじゃねえよ!」
「ははっ、相変わらず面白いのな」
「え、ハルちゃんと婚約してるんじゃないの?」
「断じて違います! ……あ。えっと、俺の名前は、」
「沢田綱吉くんでしょ?」

 悪戯っぽく笑ったみのりさんに、心臓がドキリとひとつ鳴った。

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