開幕を告げるリールC
李庵side.
「久しぶりですね、ディーノさん」
「最後に会ったのは半年も前か?」
「感動の再会の前に、ディーノが日本にいる理由を聞きたいわね」
私たちの目の前にいるのは、ボンゴレの同盟ファミリーの一つであるキャバッローネファミリーの十代目ボスで、通称「跳ね馬」と呼ばれているディーノだった。
先生がボンゴレ次期十代目ボスくんの前に家庭教師をしていた人物であり、次期十代目ボスくんの兄弟子にあたる。
キャバッローネファミリーの本拠地はイタリアなのにもかかわらず、部下も連れずにどうして彼が――部下も連れずに?
「あなた、部下はどうしたの?」
「あー……」
「オレが遅れた理由はそれだ」
「ロマーリオさんだけでも連れて来なさいよ!」
彼が「跳ね馬ディーノ」と呼ばれる前は「へなちょこディーノ」と呼ばれていた。
今ではボンゴレの同盟ファミリー三大勢力の一つのボスだけど、かつては気弱で臆病だったため、とてもマフィアのボスになる人には見えなかった。
だけど、先生が家庭教師をしてからしばらくが経った時、ある事件が起きた。
キャバッローネを潰そうしたファミリーが戦いを仕掛けてきて、キャバッローネは同時の九代目ボス、ディーノの父親は命を落とした。
ファミリーと町の住民を守りたいという一念で才能を開花させ、「へなちょこディーノ」から「跳ね馬ディーノ」と呼ばれるようになった。
でもそれが仇になったのか、ファミリーの前では優秀なボスでも、一人になるとその実力は激減して、極度の運動音痴になるという、ある意味での究極のボス体質になってしまった。
「ロマーリオも他の部下たちもいたんだが、リボーンを捜してる間にバラバラになっちまってな」
「ディーノさん、携帯で連絡はしてみましたか?」
「あ、その手があったか! ありがとな、みのり」
ディーノは優しそうな笑顔で、みのりの頭にポンッと手を乗せた。
みのりは「どういたしまして」と言って、ニコッと笑った。
……なにかしら、このなんとも言えない空気は。
私の目の前にいるみのりとディーノは、傍から見たら付き合いたてのカップルのような、新婚夫婦のような……。
先生なんて、二人をほっといて呑気にエスプレッソコーヒーなんか飲んでるし。
「で、結局ここにいる理由はなんなの?」
「ああ、見送りと護衛だ」
「……見送りと護衛?」
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