※毎回のようにぐだくだ


「ねこちゃんのまくらとー…あとはピヨちゃんはみがき!あっ、それとねー」

やたらでかいリュックから様々なものを楽しそうに出すハヤト。今日は待ちに待ったお泊まりというところだろう。トキヤは毎度のように高級菓子を片手に深々と頭を下げてハヤトを置いて仕事に出かけた。こっちだって仕事してるのになんだこの差。

「なんだこれは」
「えっと…ピヨちゃんの絵本」
「まさか寝る前に読めって言うんじゃねぇんだろうな?」
「さすがさっちゃんだにゃ〜」

親指を上にピンとたてて「ぐっじょぶ!」と満面の笑みを放つハヤトに俺はがっくりとうなだれる。だが泊まることを許したのは俺なのだから駄目と言えるわけもなく無言の了解をしたのだった。

「あのね!あのね!でぃーぶいでぃーもってきたにゃ〜!」

リュックの周りが散らばり始めたころ、ハヤトは何を出したと思えばSTA☆RISHのライブDVDを出し始めたのである。パッケージにはあいつらが楽しそうにうつっていて思わず目移りしてしまう。

「これいっしょにみよう!」
「………夜になったらな」

一回だけ那月に特別席のチケットを貰って見に行った以来見に行っていないSTA☆RISHのライブ。あの時は散々だった。打ち合わせなんてしていないのにスペシャルゲストとか言って目の前で見ていた俺を那月が引っ張り上げて歌わされたっけな。多分DVDは大方トキヤから借りたのだろう。正直見たい、すごく見たい。

「とりあえず座ってろ、飲み物持ってくる」
「ぼくココア!」
「分かってる」

見たい衝動を抑えて俺はキッチンへ向かった。夜に見ると言ったが早めに仕事を切り上げて一緒に見よう。那月の可愛さを…いや、活躍を見るために。

「出来たぞ、熱いからな」
「はぁい」

ハヤトはふぅふぅと少しずつココアを冷ましてちみちみと口に含んでいく。那月に負けず劣らず…くそ…可愛い。那月に似て可愛いのに目がない俺はハヤトもすっかりその対象である。本人を目の前にして平然な顔を取り繕うのは日常茶飯事。

「ごちそうさまでしたっ」
「一気飲みかよ」

俺は空になったカップをハヤトの手中からさらりと取って流し台に置いた。

「今から仕事するから大人しくしてろよ」
「あいあいさー!」

軍人が敬礼するように左手をぴしっと頭に添えるハヤトを適当に促して俺はとっと仕事を進ませようと思った。

「あれ〜?」
「どうした?」
「パッケージのなかにでぃーぶいでぃーがないにゃぁ!」
「…てめぇ…っ…」
「てへっ」

てへぺろとはまさにこの事だろう。


〜20120309
つづく



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