上機嫌なハヤトを引き連れて歩くこと五分、近所の公園が見えてきた。どこにでもあるような遊具が並んでいて休日のせいもありちょこちょことチビ達が遊んでいた。ベンチでは子供の母らしき人達が楽しそうに話している。この中に男の俺が1人、多分ハヤトは俺の子供に見られているに違いない。最悪だ。

「俺の目の届く範囲にいろよ」
「はんい…?」
「だから、遠くまで行っちゃだめだってことだ」
「わかったよぉ!」

キラキラと眩しいほどの笑顔を振りまき小さい手をブンブン振ってハヤトは遊具に駆け寄っていった。だが象の形をしたすべり台の階段に足をかけてひと滑りしてくると無言でこちらに戻ってきた。怪我でもしたんだろうか。

「どうした」
「ひとりだとたのしく、ない」
「……は、」

なるほど、遊ぶ相手がいないのはさすがに楽しくない。だから俺を遠まわしに誘おうという魂胆だろうが、こんな図体でかい大人が遊んだら変な目で見られておわりだ。可哀想だがそれは出来ない。さてどうしようかと辺りを見ればふとブランコが目に入った。これだ。

「…こっちこい」
「?」

ハヤトの腕を掴んでブランコのところまで連れて行く。隣で親が子供のブランコを押すのを見てハヤトは気づいたように自らブランコに乗った。

「これなら一緒に出来んだろ」
「…うん!」

優しく小さい背中を押して徐々にブランコとハヤトは高さを増していく。ハヤトはきゃっきゃとはしゃいで楽しそうだ。それを見た隣の母親が微笑ましくこちらを見てきたので視線をそらしながらしばらくブランコを押していた。

「たのしかったにゃあ!」
「てかなんだにゃあって。猫かお前は」
「かわいいネコさんのマネだよぉ!」
「…そうかよ」

帰り道はハヤトが自ら俺と手を繋いで帰る羽目になった。懐いたなんて思いたくもない。まぁ1日って言われたし俺も頑張ったと思う。トキヤには本当に感謝してもらわねぇとな。

「ただいまぁー!」
「お前の家じゃねぇからなここ」

公園から帰宅すると既に夕方だった。色んな意味で疲れた俺はソファーに体を預けた。トキヤが来るまでどうやって時間を潰そうかと考えているとふいに熱い視線を感じる。

「なんだよ」
「うぅ〜っ」

視線の先は勿論ハヤトで、問いかけてやると何か言いたげに服の袖を掴んだ。

「言いたいことあるなら言え」
「えっと…えっと…おひざ…」
「膝だぁ?」
「おひざのうえ、すわりたい…」

震える声で俺の膝の上に座りたい、正式には膝の間に入りたいとお願いしてきたハヤト。おいおい俺は家族じゃねぇんだぞ、と言いたくなったがどうにも断れない自分がいて俺は近くにいたハヤトをひょいっと持ち上げて膝の間に座らせた。

「ふぉ〜〜…!」

余程嬉しいのかハヤトは意味の分からん声をあげて体重を俺に預けてきた。これごときでこんなに嬉しそうにされても。とは言っても小さいから何にも苦じゃない。

手持ちのリモコンでテレビを付けて10分、やけに静かだなぁとハヤトの顔を覗くと余程疲れたのか小さい寝息をたててすやすやと眠っていた。

「たく…」

この体勢と寝苦しいだろうと起こさないようにソファーに寝かしてやった。やっぱりガキはガキだな、とふわふわの頭を撫でる。だが

「おぉ…」

思わず声が出るほど指に絡みつく細い髪があまりにもさわり心地が良くて俺は気がつけば夢中になっていた。

ピンポーン

インターホンの音に我が帰ってどれだけ触っていたのかと自分を責めた。ドアを開けるなりどこかの高級な菓子袋を持ったトキヤが

「砂月さん、ありがとうございました!」

と深々と一礼してきた。

「静かにしろ、ハヤトが起きる」
「え、寝てしまったんですか」
「まぁ公園行ったから疲れたんだろ」
「そんな遊んで頂いて…」
「いいから早く持っていけ」
「はい」

ソファーで気持ちよさそうに爆睡するハヤトを馴れた手つきで背負うトキヤを見てやっぱりこいつの兄なんだな、と感心する。

「それ、一応お礼です」
「俺は甘いもん好きじゃねぇ」
「えっ」
「まぁいい、那月にやる」


こうして俺の長い1日が終わった。

〜20120224



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