pipipipipi

「ん…」

那月から貰ったお揃いのピヨちゃん目覚まし時計を黙らせて深く布団を被る。ちら、と見えた時刻は7時。今日は週にあるかないかの珍しいオフだ。午後まで寝ていられるな…と目を瞑って意識を落とす。今日は那月も忙しいと言っていたので、1人でのんびり過ごそう。そう決めた瞬間だった。

「すみません!砂月さん!いますか!?」

インターホンを押すのではなくドアを叩く盛大な音が聞こえた。この声はトキヤか?俺なんかと滅多に話さないやつ(まず俺が話そうとしない)が何故こんな休日に来るんだ。見事に二度寝の邪魔をされ怒りを覚えながらもパジャマのままドアを開けた。

「なんだよ、こっちは久々の休みなんだよ。他を当たれ」
「もう全員に当たりましたよ…貴方が最後です」

は?と惚けながら手櫛で髪を直す。トキヤは物凄く申し訳なさそうに手を後ろに回した。その後ろに秘密でもあんのか?と擬視していると、その腰辺りから出てくる小さな生き物。髪型、顔共にトキヤと全くと言っていい程そっくりの、まさにトキヤジュニアが出てきた。唯一違うとすれば、こっちのほうが目が大きく、キラキラしてやがる。

「この子を、預かって欲しいんです」
「なんだお前、隠し子か」
「ち、違います!弟ですよ!!」
「はぁ?弟だぁ?」

そんなもんいたのか、まぁ俺には関係ないが。てか、預かってとか聞こえたのは気のせいにしたい。

「私今からドラマの撮影で…親に預けられたんですが面倒見れるわけないじゃないですか…それで皆さんに当たってみたのですが…」
「…俺しか居なかったわけか」
「お願いします…今日だけ!1日だけでいいんです!」

余程焦っているのか、俺しか頼みの綱が居ないからかこんなトキヤは今まで見たことが無かった。少し面白くてからかってやろうかと思ったがそれはさすがに可哀想だと思い無言でトキヤジュニアを見つめる。

「この子結構人見知りなんですが…手間は掛からないので…どうか…」
「…わかったよ」
「本当ですか!?」
「今日だけだぞ」
「ありがとうございます!」

今度何かお礼しますね!と深々頭を下げてトキヤは足早に消えて行った。そして俺の目の前にちょこんと残されたちっさいトキヤの弟。不安と言う文字が表情から見て分かるくらいもじもじしている。そりゃあこんな無愛想な男目の前にしたら不安になるだろうな。

「とりあえず、中は入れよ」
「あ、うんっ」

少し戸惑った様子でお辞儀をして「お邪魔します」と小声で呟き入っていく。さすがトキヤの弟、礼儀はきちんとしているようだ。これなら他人は居るがまったりと出来そうである。

「何も触んなよ」
こくりこくり
「まぁくつろいでもいいからな」
こくりこくり
「……………」

いくつか注意事項を話してドカッとソファーに座る。そういえば名前を聞いていなかった。さすがにトキヤジュニアと呼ぶのも気が引ける。ドアの前に立ったまま動かないちっこい生き物に視線を向けると偶然にも目線がばちりと合った。

「お前、名前は」
「え、えっ、…ぼく…?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「は、はや…ハヤト…」
「俺は砂月だ」
「あ、宜しく…お願いします」


ハヤト、と名乗るちびっこはあまりにも出来すぎたガキだった。




20120221〜




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