「さっちゃんこんばんは〜!暇だったから来ちゃいました〜!」
ドアを開けると、天使がいた。
「あ!ハヤト君の靴があるってことはあの子もいるんですね!」
そう那月は微笑んで靴を脱いでリビングに向かう。俺もその後を追うように歩く。こうしていきなり那月が部屋に押し掛けるのは珍しいことではない。那月は作曲を基本自室でやる俺が寂しくないようにという理由で来るのだ。
「あっ、なっちゃんおはやっほ〜!」
「夜だからよるやっほー…かな?」
ハヤトも那月も数回しか会ってないというのにもうすっかり仲良しである。お互い俺と違って社交的だからか、それか単に気が合うのか。そんなことより作曲だ。楽しそうなハヤト達を見てたいが仕事が大事、俺は2人の会話をBGMにしながら作曲をすることにした。だが2人の会話はまた俺のことばかり。すぐにペンを持つ手が止まった。
「お前らなぁ…」
「さっちゃんの好きですか?」
「うん、すきだよ!」
「僕もさっちゃんのこと大好きです!」
「じゃあぼくはだいだいだーいすき!」
「え〜!じゃあ僕は大大大大だーいすき!」
「ぼっ、ぼくはぁ!」
「どうでもいいことで張り合うな!」
そう声を荒げて2人の口を手で塞ぐ。「もがっ」と声が聞こえるのは気にせずそのまま手をあてる。聞いていて火が吹きそうになる会話をこのまま黙って流せるほうがおかしいだろう。
「いいか、俺は仕事をしてるんだ。ハヤト、お前静かにしないと追い出すぞ?」
「むぐっ、ひゃっちゃ、ん!やらぁ!」
「那月も子供じゃねぇんだからハヤトと静かにテレビでも見てろ」
「ふぁーい」
決して本気で怒れない自分にため息をつきながら2人から手を離してやっと仕事を進められることが、できそう、だった。
「そういえば今日DVD持ってきたんです、一緒に見ましょうさっちゃん、ハヤト君」
一瞬那月の頭の上にピコーンと電球のマークが見えたような気がする。じゃなくて、
「今から見たら気が散るからな、後でだ」
「なっちゃん何持ってきたの〜?」
「ふふ、秘密…です!」
唇に人差し指を当ててウインクをする那月。若干無視されているような気がするのは俺だけと信じたい。
「勿論皆で一緒に見たいから、さっちゃんのお仕事が終わってからにしましょうね」
ということらしいので俺は九時を目標に作曲を始めた。その間ハヤト達は那月が持ってきたトランプやらピヨちゃんのぬいぐるみでワイワイと騒いでいたのだが。
〜20120401
続くぜ!
よるやっほー