<※学パロ(HAYATO会長さっちゃん帰宅部)


あと一枚、さっきまで厚い束だった書類もこれで終わる。明日筋肉痛決定の右腕を高らかに伸ばして枠の中に判子を押した。

「ふにゃぁああ…おわったぁ…」

達成感に満ち溢れ思わず声を上げる。けれど生徒会室には自分しかいなくて声は虚しくも響き渡るだけ。椅子から立ち上がり力一杯背伸びをする。途端に体中の疲れがドッと溢れた。

「さっちゃん待っててくれるかなぁ…」

外はすっかり夕暮れでカラスはお家を目指して羽ばたいている。さっちゃんに遅れるってメールするの忘れちゃったし多分帰っちゃったよね。気分がずーんと下がるのが分かって、帰り道が凄く憂鬱に感じられた。生徒会室の鍵を閉めて廊下を歩く。窓からグラウンドを見ても部活をやっている生徒もいない。重たい足取りで昇降口に着くと人影が見えた。生徒が忘れ物でも取りに来たのかな?と目を凝らしても逆光のせいで顔が見えない。

「早くしないと学校閉まっちゃうよ〜」

と呼びかけてみても返事はなく、僕は気にしないことにした。履いていた上靴を外靴に変えてその人の近くに行くと途端に頬に冷たいものが当たった。

「ひゃあっ」
「何変な声出してんだよ」
「さ、さっちゃ…?」

人影の正体はさっちゃんだった。メールしてないのにこんな時間まで待っててくれたんだ。僕は嬉しくて嬉しくて思わず抱きついた。ふと目に入ったさっちゃんの手には僕が大好きな紅茶の缶が握りしめられていた。

「てめ、重いんだよ!」
「さっちゃんが優しいから仕方ないにゃあ〜」
「俺は家帰っても暇だから待っててやっただけだっ」

さっちゃんは相変わらず嘘をつくのが下手だ。それさえも可愛いんだけどね。そんなこというと怒っちゃうから言わないけど。さっちゃんはくっついたままの僕を引き剥がそうとはせず、そのままずるずると引きずり始めた。

「さっちゃん靴擦れちゃうにゃぁ」
「うるせぇ。ほらよ」

ひょいっとさっちゃんの手から空中を舞った紅茶をキャッチする。

「お疲れ様、会長」

その一言がどれだけ嬉しいかさっちゃんは知らないんだ。


〜20120224