猿が俺達を呼びに来てすぐ案内された広間には様々な酒肴が並べられたいた。
目を輝かせた真樹緒は先ほどの事などすっかりと忘れてあれは何だこれは何だと猿に構っている。
はしゃぎすぎるなよと髪を撫でつければ猿に謂れの無い視線を流され喉が鳴った。
手はまだ出してねぇよ。
どうだか。
真樹緒を庇うように伸ばされた猿の手を叩いて席につく。
真樹緒は真田の隣を陣取ってご満悦だ。
ゆっきーゆっきーと楽しげな声が聞こえてくる。
あれの近くに人が増えるのはいい事だと思う。
誰へでも態度を変えない真樹緒のそれは美点だ。
だが。
「どうした伊達のよ、顔が歪んでおるぞ。」
「Ah―?」
「宴の席で為す顔では無いのう。」
「チ、」
虎のおっさんからの酌を受け、冷たいが極上の酒を煽る。
肘を立てながら横目を流せば面白そうに笑う顔が自分を見下ろしていた。
何がだと酌を返すと喉を鳴らされて終わる。
白々しいんだよおっさん。
てめぇんとこのがうちのpuppyに懐き過ぎてるからだろうが。
面白くねぇ。
美味そうに飯を頬張る真樹緒の顔は相変わらずcuteで眼福だ。
その頬に米粒がついていたところで、それが損なわれる事は無い。
汁に入っている椎茸を避け、小十郎に見つかってひくり肩を揺らす事も然り。
ただ。
何でてめぇんとこの忍がさも当然の様にその米粒取ってんだって話だコラ。
「風魔。」
やれ。
「(シュッ!)」
「え、ちょ何で苦無!?」
「ええー!!こーちゃん!?」
何で!
突然なんで!!
クナイは危ないよ!!
今そんなタイミングやった!?
俺、さっちゃんにご飯つぶ取ってもらってたんやけど…!
「見事な急所狙いにござる…!」
「こーちゃん…!!」
「(ぷい)」
「ぬー!そっぽむかんとってー!」
俺悲しい!
そっぽは悲しい!!
真樹緒が未だ米粒を頬につけながら風魔に抱きついた。
「チ、避けたか。」
舌打ち鼻を鳴らせば目の前に徳利が。
見上げると虎のおっさんが可笑しそうに笑っている。
見世物じゃねぇぜ、おっさん。
「まだまだ青いの。」
「…はん。」
青くて結構。
いささかも問題はねぇ。
笑い返してやれば「若造が」と。
酔いが心地よく回って来たのだろうか、そんな言葉さえ気にならない。
「中々の心酔よな。」
「そりゃぁ、praiseだな。」
「む?」
「褒め言葉っつーこった。」
騒がしくはしゃいでいる風魔と真樹緒を見ながらゆるゆると酒を煽る。
猿が何か言いたげに睨んでくるが聞く耳はねぇ。
簡単に真樹緒に触れると思ってんじゃねぇぞてめぇ。
不敵に笑ってやればひくりと猿の頬が歪んだ。
くく。
言いたいことがあるなら言ってみろ。
返り討ちにしてやるぜ。
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やっとこ宴。
こーちゃんは筆頭の言う事もちゃんと聞きます。
でも多分筆頭に言われなくたってクナイは投げていたと思う。
政宗様の目下の敵はさっちゃん。
キネマ主が懐いているのでモヤモヤしています。
でもキネマ主が楽しそうなのはそれでいいと思っているし。
ちょっとしたジレンマ。
青いのです(笑)
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