「ええ天気―…」


縁側に寝っころがって青いお空を眺めてたらトンビがぴーひょろろって鳴きながら飛んでいきました。
政宗様とおやかた様が大事なお話してるからお部屋でお留守番な真樹緒ですー。
こんにちは!


やぁ、おやかた様と政宗様同盟組むんやて。
そう言えばおやかた様そんな事言うてたよねえ。
今日はそれを正式に決めるって皆朝から忙しそうにしてたん。
ゆっきーはカイの武将さんやし、さっちゃんはゆっきーのお忍びさんやからそのお話に出席してるんやで。
もちろんこじゅさんもね!


俺?
俺も一緒におってもええって言われたんやけどな、そこはほら空気読まなあかんやん。


めっさ重要なお話やで。
お国とお国が関わってくるんやで。
俺のほほんと政宗様のお膝に乗ってる場合やないやん…!


やからね、俺部屋でお留守番してるわーってそのお膝からのいた訳ですよ。
政宗様に舌打ちされたのは超心外です!


「ぬー…」


ほんで俺も今、ちょっと考えやなあかん事あるしやぁ。


ほら、すっごい大事な事。
ちょう大事な事。


え?
分からん?
ほらあれやん。


おシゲちゃんやん…!


ぬーん。


俺、結構勝手にお城出てきてもうたやん?
お手紙置いてきたけど読んでくれてるか分からんし、読んでくれてても絶対おシゲちゃん怒ってると思うんよ。
やってあのおシゲちゃんやで。
俺の顔を「文句があるなら言ってみなさいよ。」ってむにょんと引っ張るおシゲちゃんやで…!!


恐ろしい。


「ぬぬー…」


ほんでな、これはちょっとやばいぞと思ってな、カー君にお手紙運んでもらったんやけどお返事けぇへんの。

お手紙にはな、政宗様の怪我なおったよーっていうんとこじゅさんも元気ですーっていうんとこーちゃん取り戻したよーっていうんと、俺は元気やでーっていうんを書いたんやけど。
うんともすんとも。
お空にはやっぱりトンビが飛んでるだけでカー君の姿はどこにも見当たりません。


恐ろしい…!!


「真樹緒。」
「ぬ?」
「こんなところで何をしているのかね。」
「松永さん!」


俺がおシゲちゃんへの恐ろしさにごろごろ廊下を転がってたら素敵なちょいワル松永さんがやってきました。


あ、松永さんは何や捕虜?な扱いらしいで。
これからどうするにしても体面が必要だからな、って政宗様言うてたん。
俺難しい事はよう分からんけど「後はお前の好きなようにしろ」って言われたから、とりあえずあれから毎日松永さんとおしゃべりしたりお茶飲んだりしてます。


「あんなー、ちょっと俺お悩み中やねん。」
「ほう?」


卿が珍しい、て松永さんが俺の隣に座る。
ほんならふわっていい匂い。
政宗様とはちょびっと違うけどやぁ、すごいいい匂いなん。
やっぱり素敵なちょいワルは大人の匂い!


「おおー。」
「何かね。」


んー?
別にー。
眉毛をくい、って上げた松永さんに笑う。


別にー。
何か松永さんておやかた様とも氏政じいちゃんとも、こじゅさんとも全然違ったタイプの大人の人やなーって思って。
そんな人と話したりしてるのって凄いなーって思って。

何てゆうんやろ。
んー。


「学校の近寄りがたい先生と思いがけず仲良くなれた感じ?」


うまい事言えやんけど!
何かそんな感じ!
ちょっと特別な感じ!


分かる?って松永さんを見上げたらくつくつ笑ってるん。


ぬ?
何?
どうしたん。


「卿は本当に変わった子供だ。」
「?そお?」


俺にしてみたら松永さんの方が変わってると思うけどなー。
や、どこがって聞かれたらそれもちょっと困るんやけど。


しいて言うたらしゃべり方?
ほらあの「卿」ってやつ。
あー…後、やけに骨董に詳しいとことか。
ちょんまげ平茸なとことか。
指ぱっちんとか。


あ、結構あるねえ。


「なぁなぁ、松永さーん。」
「何かね。」
「指見せてー。」


やぁ、俺いまだに指ぱっちんがどんな仕組みか分からんねんなー。
ごろん、って寝転んだまま松永さんに手ぇ伸ばしたらちょっとびっくりされた。


ぬ?
どなうしたん?
やっぱり指ぱっちんの仕組みがばれるのまずいん?
聞かんかった事にしとこうか?


「いや、」
「お。」


見上げてたら松永さんが俺の頭をぐりぐりって。


ぬー。
こちょばい。
松永さんやっぱり手ぇおっきいねんね!
俺の頭すっぽり隠れてしまうよ。
でもやっぱり耳の後ろはこちょばいから止めてって言うたのに松永さん聞いてくれへんの。
逃げるように頭振ってたら「好きなだけ見ればいい。」って。


「おおー。」


それから目の前にひょこって出された手はごつごつした大人の男の人の手やった。

皮が硬くて傷もいっぱい。
親指が一番おっきくてほかの指もおっきい。


「ほーほー、これが指ぱっちんの手かー。」


親指にぎにぎ。
手のひらもにぎにぎ。
なぁーんもおかしなとこなくてちょっとむー。


あれー?
俺の予定やったら指ぱっちんの秘密がここで明らかにされやなあかんのに。
いやだわー。


「真樹緒。」
「ぬ?」


どうしたん松永さん。
指ぱっちんの秘密教えてくれるん?
首傾げたら「いや、」って。


「卿の悩みとやらは良いのかね。」
「あ!」


そうやん!
うっかり!!
うっかりしてる場合やないのにうっかり!


ちょっとちょっと松永さん聞いてんかー。
松永さんのお膝にのしっとのっかって。
まずはおシゲちゃんがどんな人なんかってとこからお話しましょ!


ほらほら松永さん。
笑ってる場合やないねんで!


  

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