「(!!!)」
「え、ちょっと真樹緒。」
これどういう事。
「ぬ?」
平茸さん改め松永さんと手を繋いでたら、目の色を変えたさっちゃんにべりっと剥がされました。
真樹緒です。
ついでに厳ついリーゼントの兄やんら三人を担いだこーちゃんに受け止められて思いっきり首を振られました。
真樹緒です。
あ、こーちゃん兄やんら探してくれてんなぁ。
おおきにおおきに。
ありがとー。
「真樹緒殿、これは…」
「ぬー?」
傍におったゆっきーが松永さん見ながら槍を構えた。
じろって松永さんを睨んで槍でまっすぐに松永さんをさす。
あれちょっと待ってゆっきー。
落ち着いてゆっきー。
その槍なんや火が出てるよゆっきー。
めらめら燃えてるよ。
ちょっとこの距離でも熱いよ。
……
………
あぶないよ…!
「ゆっきー、ゆっきー、ストップ。」
「ぬ?すとっぷにござるか?」
「そう、ちょっと待って待って。」
松永さんはこれから俺らと一緒に政宗様とこに行くねんで!
もう何にもせぇへんから安心しておっけーよ!
やから槍片付けて欲しいん。
そんなメラメラな槍で刺されたら燃えてしまうよ!
ただでさえ松永さんところどころ焦げてるのに更に焦げてしまうよ!
「何だって?」
「ぬ?」
「ちょ、この人連れて行くの!?」
「え?言うてなかった?」
びっくりしてるさっちゃんに首を傾げる。
あれー?
俺、元々そのつもりやったんやけど。
松永さんを連れて行くつもり満々やったんやけど。
言うてなかったっけ。
「初耳にござる。」
「そんな大事な事、何勝手に決めてるの。」
「ぬーん。」
あれやぁ。
俺としたことが!
ついうっかり。
へらって笑ったら笑い事じゃありません、ってさっちゃんに怒られた。
ぬん…
さっちゃん怖い。
「苛烈苛烈。」
「ぬ?」
「真樹緒、卿の共は憂患なようだ。」
私のような輩を連れていては。
松永さんが笑う。
ぬ?
ゆうかん?
何ゆうかん。
勇敢?
「憂患だよ。」
「ぬん、ゆうかん。」
卿は馬鹿なのかそうでないのかよく分らない子供だな。
呆れたような顔で松永さんが俺の頭撫でる。
大きな手はおやかた様よりは小さいけれど、それでも俺の頭をすっぽり覆ってしまう。
その瞬間、さっちゃんが物凄い勢いで松永さんを睨みました何その顔ちょう怖い。
「随分な嫌われ様だ。」
「…それやのに楽しそうやね、松永さん…」
こんなさむすぎる空気の中よく笑ってられるね。
俺凍えそうよ。
息が止まりそうよ。
さっちゃんから流れてくる空気が冷たくて!
「何の何の。」
「この素敵なちょいワルめー。」
大人の余裕ってやつですか!
でも、それにしても何で皆そんな怖い顔するん。
もう松永さん何にもせぇへんで。
ちょっと一緒にカイへ行くだけやで。
指パッチン気になるんやったら俺、松永さんの手繋いでるからやぁ。
松永さんを見上げて「どお?」ってゆうたら「卿の好きなように」って。
やから手ぇ繋ごうと思ったんやけど後ろからこーちゃんがぐい、って。
「こーちゃん?」
「(ふるふる)」
おお…
今度はこーちゃんが松永さんを睨んでる。
目は見えやんけど穴あくぐらいじっと松永さんを睨んでる。
大丈夫大丈夫。
こーちゃんはもう松永さんに渡さへんから大丈夫やで!
安心して。
俺がずっと傍にいるからね。
やからそんな松永さんを睨まんでもええんやで!!
こーちゃん、こーちゃん落ち着いて、ってこーちゃんのもふもふ頭を撫でる。
俺は全然大丈夫やから。
「(…)」
「な?」
ほらほら、一緒にお屋敷戻ろう?
政宗様もおるし。
こーちゃんもゆっくり休ませてもらおう?
ずうーっと大変やったやろう?
やから、なぁ。
「こーちゃん。」
大丈夫。
俺がおるやろう?
じぃ、ってこーちゃんの目を見て笑う。
俺、ここにおるよ。
こーちゃんの前におるよ。
やから大丈夫。
なぁ?
こーちゃんの頭を撫でながらぎゅう。
ほらほら大丈夫、ってぎゅう。
「こーちゃん。」
「………(こくん)」
「いいこ!」
ほんならこーちゃんは小さく頷いてくれました!
いい子!
流石俺の自慢のお嫁さん!
「……いいの、右目の旦那。」
「…お前はあの真樹緒を言い聞かせられるのか、真田の忍。」
「…それを言われちゃぁねぇ…」
「流石、真樹緒殿!!」
なんと見事な折衝でござろう!
某、感服致しましたーー!
「ちょ、旦那うるさい!」
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