「やぁ、間に合ったー…」
こじゅさんが今にも松永さんに斬りかかろうとしてたんやけど、間一髪で止まってくれました。
何か言いたげやったけどぐって飲み込んで俺に前を譲ってくれました。
今は刀しまってちょびっと後ろでいててくれてるん。
やぁ、俺が大事なお話あるってお願いしたからやぁ。
ほんでその勢いに乗って、松永さんの指パッチンも止めて見せました真樹緒です。
こんにちは!!
ふふーん。
指ぱっちんな、出来やんように手をつかんでみたん。
松永さんの手。
もー。
今、爆発させる気ぃやったやろう?
自分ごと全部爆発させてしまおうって思ったやろう?
「あかんよ。」
そんなんあかん。
させへんよ。
ぎゅって手握ったら平茸さんが目をちょっと見開いた。
「…本当に来たのか…」
「うん。」
そのまま平茸さんの手をにぎにぎして笑う。
けぇへんと思った?
奥州からどうやって来るんかと思った?
やぁ、ここまでこれたんは俺の力や無いねんけど。
優しい人らがね、助けてくれたん。
俺、絶対こーちゃん迎えに行くってゆうたから。
「ぼろぼろやねぇ。」
「…何が可笑しいのかね。」
ああ、かんにん。
別におかしいとかやないん。
やけど平茸さんぼろぼろやん。
俺のとこに来た時はあんなに自信満々やったのに、今ちょっとぼろぼろやん。
着物も破れてもうて、髪の毛乱れてるよ。
汚れるんとか嫌いそうやのにね。
「…これが私の相応だと言うことだ。」
「ちがうん。」
ちがうんちがうん。
そんなへっこまんといてえな。
気にした?
いじわるやった?
ごめんやあ。
あんな、俺のとこに来た時と今との差がな。
何や可愛いなーって。
自信満々やったのに今ぼろぼろなん可愛いなーって。
「…、」
「ぬー…すごい皴。」
眉間にすごい皺。
気ぃつけやな型つくで。
今ちょっと両手塞がってるからぐりぐり出来やんのが勿体無いなー。
よいしょって平茸さんのお腹に乗って笑う。
「卿は…」
「うん?」
「卿は一体何のつもりかね。」
私を恨んでいるなら斬ればいい。
卿の忍を奪い、心許す者を傷つけ、竜の爪を奪ったのはこの私だ。
それなのに何をそんなに楽しそうに。
ああ、少し不愉快だよ。
「何ってあれやん。」
松永さんが指パッチンしやんようにがっちり手ぇ繋いでちょびっとその手を振ってみた。
俺がここに来たんはこーちゃんを迎えにくるためと。
連れて行かれた兄やんらを迎えにくるためと。
こじゅさんに会うためと。
それから。
「松永さんには政宗様に謝ってもらわなあかんからやぁ。」
ほんまはリーゼントの兄やんらの分も、こーちゃんの分も謝って欲しいとこやけど、こじゅさんにコテンパンにやられたみたいやし、それは勘弁してあげる。
こじゅさん怒ったらめさめさ怖いしね!
言うたら松永さんの目がびっくりして大きなったん。
それを見ながら俺はけらけら笑って松永さんの手をお腹の上で揃えた。
やからねえ、指ぱっちんは止めて欲しいん。
俺、それあんまり好きくない。
「…死体は残さない主義でね。」
「まだ死ねへんから関係無いもん。」
ほらほら。
これから忙しいねんで。
ここからまた政宗様がおるカイに行かなあかんねんで。
さー立って!
さー起きて!
ぐん、って手ぇ引っ張ったら松永さんの体が瓦礫から出てくる。
おお…
実は結構埋まってたんやね松永さん。
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