「…とどめかね。」
「あの世でてめぇのした事を省みな。」
煙の向こう、瓦が散乱した場所で、こじゅさんがまた刀を振りかぶったのが見えた。
こじゅさんの前には松永さんがおって、こじゅさんの刀が目の前にあるってゆうのに逃げる様子も無くって俺のこどうが早くなる。
やあやあ真樹緒です。
煙の中をすてきに走るこーちゃんの腕の中からこんにちは!
「こーちゃん見えた?」
「(こくん)」
ぬー。
まずいまずい。
絶対まずいー。
こじゅさんは何か白っぽいのが体から出て刀パリパリ言うてるし、松永さんは今にも指パッチンしてしまいそうやし。
何だかとっても嫌な予感しかしません…!!
こーちゃんがぴょんぴょん急いでくれてるんやけど、やっぱり嫌な予感しかしません。
やってこじゅさん今にも必殺技とか出しそう。
出して松永さんを思いっきり攻撃しそう。
前髪ぱらぱらってちょびっと下りてていつもと雰囲気違うしやぁ。
「…あかんよ、こじゅさん。」
こーちゃんの首にぎゅって抱きついて深呼吸。
あかんよ。
あかんよこじゅさん。
その刀、振り下ろしたらあかんよ。
俺、勝負とかよう分からんけど。
絶対な、その刀はあかんと思うん。
やぁ、冗談とかやなくて。
「こじゅさん…」
それは違うと思うん。
やってこじゅさん今ちょう怒ってるやん。
松永さん嫌な感じで笑うてるやん。
何や雰囲気がおかしいやん。
それやのにな、その刀で斬ったらあかんと思うんよ。
「こーちゃん、ここで降ろして。」
「(!?)」
「だいじょうぶだいじょうぶ。」
びっくりしてもうたこーちゃんの頭をなでなで。
大丈夫やでってなでなで。
ちょっと俺指パッチンとこじゅさん止めてくる。
ほら急がな色々まずいしやあ。こーちゃんはここで待ってて。
「(ふるふる!!)」
「大丈夫やってー。」
思いっきり首を降るこーちゃんの頭をやっぱりなでなで。
あんまり無茶な事をせぇへんからってなでなで。
お願いこーちゃん。
俺を信じて。
じぃっとこーちゃんを見上げたらやぁ。
……
………
「(ふるふるふるふる)」
しんけんな顔で思いっきり首を振られました。
嘘吐いたら駄目。
そんな目をしても絶対無茶をするくせに。
飛び込んで行くくせに。
だから駄目。
行かせない、って…
「ぬーん…」
お見通し!!
こーちゃんがお見通し!!
ど、どうしよう…?
別にそんな思い切った事せぇへんで…?
ちょっとほらあそこに行って指ぱっちん止めようかなぁって思ってるだけで。
やぁ、無茶とかはそんな。
「こーちゃん…」
「(…)」
「ぬう…」
こーちゃんが怖い。
何考えてるの、って目が怖い。
でもやぁ、でも。
ここで行かんと俺が来た意味ないのですよ。
やから、なぁ。
「こーちゃん…」
お願い。
こーちゃん。
こーちゃんにはな、連れて行かれた兄やんら探して欲しいん。
多分みんな近くにいると思うねんよ。
瓦礫の下敷きになってたらあかんやん?
怪我してたらあかんやん?
やからなぁ。
お願い。
俺は大丈夫やから兄やんら探したって?
「(…)」
もう一回お願い、ってこーちゃん見てたらこーちゃんの眉毛がきゅって寄ったような気がした。
ほんで腕の力が緩んで。
「こーちゃん…?」
おれのおでこに柔らかいものがちゅうって。
こーちゃんがちゅって。
本当は行かせたく無いんですって。
「こーちゃん…」
「(…)」
でも主がそうしたいなら、って。
こーちゃんが俺の頬っぺたをゆるゆる撫でて、またおでこにちゅう。
「ぬ。」
見上げたら鼻先にもちゅう。
それから気をつけてってこーちゃんが俺をゆっくり下に降ろしてくれたん。
振り返ったらこーちゃんはもうそこにおらんくて。
仕事が速い…!!
「おお…」
ってゆーか。
こーちゃんにちゅーされてもた。
政宗様とはまた何か違う感じ。
ふにゅって柔らかいん。
「ぬふーん…」
ちゅーされたおでこを撫でてみて。
ちょびっと幸せでにやにや。
こーちゃんからちゅーされちゃった。
元気もらっちゃった。
「俺、がんばる!」
よし!
がんばる!
首をがばって上げたらこじゅさんと松永さんがおるとこはすぐ近く。
こじゅさんがパリパリ光ってる刀を振り上げて走って行くところで、松永さんが指ぱっちん決めるとこやった。
おおおお!
大変!
「いそげいそげ!」
顔をぱんぱん叩いて気合は十分。
息を思いっきり吸い込んで。
「こじゅさぁぁぁーん!それストップー!」
松永さんも指ぱっちん止めてんかー!
俺は思いっきり走った。
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