「さっちゃんはな、お友達やから危なくないねんで?」
「(…)」


こーちゃんの頭を撫でて。
鼻と鼻をすりすりして。
しゃがんでくれてるこーちゃんの首にぎゅって抱きついて。
再会の幸せを噛み締めてる真樹緒ですー。


ぬー。
こーちゃーん。
会いたかったー。


「さっちゃんと仲良くしてな?」
「(…………)」


こーちゃんねえ、さっちゃんから俺の匂いしたからびっくりしてしまったんやねんて。
俺が危ない目に合うたん違うかって心配してくれたんやって。
やから思わずさっちゃんを攻撃してしまったんやねんて。


思わずって攻撃じゃなかったけどね…
「ぬ?」
狙われた箇所は全て急所にござる。


ゆっきーがうむうむ頷きながら「誠、伝説の名に相応しい忍よ!」ってこーちゃんを見てる。


「おお…」


こーちゃん。
あかんよこーちゃん。
さっちゃんとゆっきーは同盟組んでお友達になったんやで。
俺のお友達って事はこーちゃんのお友達ってゆう事でもあるねんで。
あ!もちろんおやかた様も!


やから攻撃せんでも大丈夫なんやで?
安心してな。
ほんで仲良くしようね?


「(…………)」
わぁーお、俺様視線で殺されそう。
「…あれ?」


あれ。
こーちゃんが頷いてくれません。
いつもやったら「(こくん)」って可愛らしく首を縦に振ってくれるのに、今日は頷いてくれません。
じぃーっとさっちゃんを睨んだまま俺から離れません。
なんで!!


や、こーちゃんがぺっとりくっついててくれるんは嬉しいから全然ええんやけど。
可愛いく首を振ってくれません…!


…ちょっと遅い反抗期やろうか…


どうしよう。
こーちゃんが反抗期。
こういう時、世のお母さんは一体どうするんやろう。
俺特に反抗期とか無かったからよく分からへん。


どうしよう!!


「(なでなで)」
「ぬ?」
「…」
「こーちゃん反抗期ちがうのん?」
「(こくん)」


ちがうかった!
反抗期ちがうかった!


優しげに俺の頭を撫でてくれてるこーちゃんはいつも通りちょびっと口元を緩めて笑ってくれたん。
やぁ、こーちゃん俺ほんまこーちゃんが反抗期やったらどうしょうかと思ったで!
ほら俺こーちゃんとはふうふやけどお母さんちがうから!


「…真樹緒って風魔に甘いんだね…」
「ぬ?そお?」
「溺愛にござる…!」


そお?
やってこーちゃん可愛いやん。
頭なでなでしたらいっつも笑ってくれるしやー。
それがまた素敵な笑顔でー。
一回見たらもうほんと大好きになるお顔やで。
二人とも一回撫でて見る?


丁重にご辞退申し上げましょうぞ。
俺様も。


体がいくつあっても足りやしないよ、ってさっちゃんとゆっきーが首を縦に振りました!
遠慮せんでもええのにー。
こーちゃんいい子よ?


「あ、そうそう。」
「(…?)」


ぬん。
こーちゃんちょっと俺言い忘れてたけど。
感動の再会のせいで忘れてたけど。


「こーちゃんこーちゃん。」
「(?)」
「おかえり。」


「(…!)」


まだ言うてなかったもんね。
おかえり、こーちゃん。
ほんでお待たせ。
お迎えが遅くなってごめんなぁ。


「(ふるふる)」
「へへー…」


ありがと。


俺一人やったらここまでよう来やんかったんけど、さっちゃんとゆっきーと、おやかた様に助けてもらったん。
力になってもらったん。
やからあんまり睨まんといたってな。
二人とも大事なお友達なん。


「………(こくん)」
「いい子!!」


やっぱりこーちゃんはいい子!
頷いてくれたこーちゃんの頭をわしわし撫でて目いっぱいこーちゃんを堪能。
ぬんぬんいいこ。
こーちゃんいい子!

ありがと!

でも何だかこーちゃんそこらじゅうぼろぼろなんよねー。

かぶとに傷が入ってたり顔が土で汚れてたり。
いったいどうしたんやろうって思って聞いてみたらやあ、こんなにぼろぼろなんはここに来たこじゅさんにやられたからみたいで。
ものすごいこじゅさん怒ってたみたいで。
鬼みたいやったみたいで。
俺と一緒におるはずのこーちゃんが俺の側におらんと松永さんの所にいたものやから、俺を裏切ったんやと思われてしまったらしくって。
「連れてこられただけって言わんかったん?」って聞いたらうん、って。


もー。
こーちゃんあかんやん!
ちゃんと言わなあかんやん!
誤解とかんとあかんやんー!


もうー!
でもだいじょうぶあんしんしてこーちゃん。
俺にまかせて。
ちゃんと俺がこじゅさんに言ってあげるからね!


「(?こくん)」


やあやあそしたら進みましょ。
こーちゃんも揃った事だしこじゅさんと連れて行かれた兄やんと平茸さんをさがしましょ。
さっちゃんが言うにはずうっと奥におったらしいんやけど。
まだもうちょっと先かなあ。
お久しぶりにこーちゃんにだっこされながら捜索再会!


「もうそろそろじゃない?」
「ぬ?何が?」


こーちゃんの隣をぴょんぴょん飛んでるさっちゃんがにっこり笑いながら言うた。
んー?
何がそろそろ?


「真樹緒殿、お気をつけ下され!」
「うん?」


あれ?
下で走ってるゆっきーまで。
どうしたん。
何やこーちゃんの腕も力こもったみたいやし。


なぁ、なぁ、こーちゃん何事?
見上げたら「静かに」って人差し指立てられた後、ぎゅうって頭かかえられたん。


あれ?


「来るぜ。」
「え、何が…わっぷ!」


こーちゃんが「駄目」やって。
顔あげたらあかんって。


隣のさっちゃんが真っ直ぐ前を向いたんが見えた。
ゆっきーが眉間に皴寄せたんもちょびっと見えた。
こーちゃんの腕は相変わらず強い。
皆の雰囲気がとんがった感じ。
どうしたん?ってもう一回こーちゃんの腕の中でもぞもぞした時やった。



ドカンって。



「え…」


前の方から轟音が。
びっくりしてたら二回目がドォン!!って。


「な…なん、」


耳がキーンってする。
キーンってして体が揺れた。


すごい勢いなん。
音がしたと思ったらすぐに煙と風が俺とこーちゃんの周りを取り囲んだん。
さっちゃんもゆっきーも見えへんくなって。


「さっちゃん!ゆっきー!!」
「俺は大丈夫だよー。」
「某もここに!」


もくもくする煙の奥から二人の声が聞こえた。
はっきりと聞こえた。
二人ともどこにおるか分からんけど、ちゃんと無事!よかった!
じんじんする耳を押さえて「俺もこーちゃんも無事やで!」ってお返事。
そしたらこーちゃんが煙から抜け出るように高く飛んだん。


「こーちゃん?」
「…、」
「え?向こう?」


崩れた塀の向こう、瓦が散乱してるところを抜けて、こーちゃんが指差した先を見る。
じぃ、って目を凝らしたところには火が。
轟々、って火が。


……
………


……火事!!!


火事!!
まじで!
ただでさえここのお屋敷ボロボロやのに更に火事!
まじで…!


すごい立派なお屋敷なのにあちこちから火が出て辺りはすすけた臭いでいっぱい。
火の粉が飛んで来て目やのどを襲う。
煙が道をおおいかくして俺は今いる場所も分らんようになってしまう。
こーちゃんの腕だけが頼りで、ぎゅうって太い腕をつかみながら目を凝らした。

それでじいっと煙の先を見たらやあ。
誰かおるんやろうかって背中を伸ばしてみたらやあ。


「え…やあ、あれ…」


あそこに見えるのは。
ちいちゃいけど、存在感たっぷりに見えるのは。


「あー!!見つけた!」


おった! こじゅさん…!
こじゅさんおった…! あの刀を振りぬいた感じでおるのは絶対こじゅさんやで間違いないん。
え、やあほんならまさかさっきの轟音はこじゅさん?


……
………


まじで!


「こーちゃん、あそこ!」
「(こくん)」


あそこ行こうこーちゃん!
こじゅさんおるよ!
会いたかったこじゅさんおるよ…!
ほんで多分こじゅさんの正面におるんはあれ平茸黒たんぽぽさんやであの瓦礫に埋もれてる人!
平茸黒たんぽぽさん!
松永さん!
こーちゃんが小さく頷いた後、俺をだっこしたままトントン塀を走る。


「真樹緒!?」
「真樹緒殿!?」
「俺ら先にいくなー!!」
「ちょ、こら待ちな!」
「危のうございます!」


大丈夫!!
こーちゃんも一緒やし大丈夫!
それより、はやく行かんと松永さんが今にも指パッチンしそうなんやもん!
鳴らしてしまいそうなんやもん!


あかんで。
あれやったらお山が簡単に爆発するねんから。
あかんで指パッチン。
侮ったらあかんねんで指パッチン!


「俺ちょっと指パッチン止めてくるー!」
何それ色々意味分からない!待ちなって真樹緒!
ぬーん。


聞こえなーい。


「っ真樹緒殿!」


ゆっきーとさっちゃんが何や焦ってるけど気にしない!
やって松永さん止めるのが先やもん!
いそげいそげ。
今指パッチンされたら皆ふっとんでしまうんやから!

ばいばーい!
さっちゃんらはゆっくり来ていいからねー!
俺先行くー!


「真樹緒殿ーー!」


佐助!
真樹緒殿が行ってしまわれた!
急ぎ追うぞ!


「……」
「佐助!!」


……
………


「…どうした佐助。」


えー。
いやぁ、もう何ていうかさぁ。
真樹緒の行動力にちょっと動けなかったって言うかさぁ。



……
………



……旦那より猛進ってどういう事…!!
「!!」





  

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