「ゆっきーゆっきー、これ何やろー。」
さっちゃんがばびゅんと屋根とか塀とか飛んでいってしばらく、俺はゆっきーとのんびりお屋敷の中を進んでます。
真樹緒ですー。
こんにちはー。
平茸黒たんぽぽさんのお屋敷は何ていうかすでに嵐でもやってきたみたいにボロボロで、そこらじゅう煤けた匂いがぷんぷんするん。
さっちゃんにじっとしてなさいって言われてるんやけど、ほら俺こじゅさんとこーちゃん探さなあかんやん?
連れて行かれたリーゼントの兄やんらも探さなあかんやん?
やからゆっきーと二人でちょっと歩き出してみたんやけど、何か門がたくさんあるとこに来てなー。
そこに壺がいっぱい転がってるん。
ぬー?
何でつぼ。
こんなとこでつぼ。
もしかしたらつぼちゃうかもしれへんけどやあ。
それが怪しげでゆっきー呼んだん。
見て見てゆっきー。
これ何やろう。
紫の煙がもくもくしてるん。
しゃがんでそのつぼ触ろうとしたら。
「真樹緒殿ぉぉぉぉ!不用意に触られてはいけませぬぅぅ!!」
「のぉお!?」
物凄い焦ったゆっきーに小さい子供の如くひょーいってだっこされました!
ああ!
そしてつぼがお空の彼方に!!
キラーンってきらめいてお空の彼方に!!
「…ゆっきー、ナイスキック…」
見事なロングシュート。
日本代表も真っ青やね。
……
………
絶対に負けられない戦いがそこにはある…!!
「真樹緒殿。」
「ぬ?」
俺がちょっと日本代表に思いを馳せてたらやぁ、ゆっきーが俺の肩をぐわしって。
ぬー?
どうしたんゆっきー。
おでこに汗かいてるよ?
だいじょうぶ?
「よろしいですか真樹緒殿。」
お聞き下され。
あくまでもここは敵地。
気を抜いてはなりません。
安易に物に触れてもなりません。
何が出てくるかも分からぬ場ゆえ。
「よろしいですか。」
「ゆっきー…」
おお。
ゆっきーがまじね。
本気ね。
俺の肩をぐわしって掴んでゆっきーの顔がちょう真剣ですこわい。
「よろしいですか。」
「はい。」
「結構。」
その後、某から離れなきよう、って三回念を押されてからさっちゃんが消えていった方に向かって出発しました!
ぬー。
さっちゃんもゆっきーもちょっと俺を子ども扱いし過ぎやない?
俺もうぴっちぴちの16歳やねんから結構一人で大丈夫よ?。
「某より一つ下にござる。」
「ゆっきー17なん!?」
まじで!
いっこ年上なんゆっきー。
まじで…!
「真樹緒殿はもう少し幼くあられるかと思うておりました。」
「ぬー。」
それは俺が年相応に見えへんてことですかー。
ごめんねー。
あんまり男らしくなくてごめんねー。
ひょろひょろもやしっ子でごめんねー。
でも俺筋肉とかつかへんねんもん…!
「いえ、」
「ぬ?」
「某には、それがとても可愛らしく。」
「…!」
イケメンスマイル!!
ゆっきーのイケメンスマイル出ました!!
何。
どないしたんゆっきー突然!!
もうほんま、ゆっきーはいきなり男前になるから困るわ!
可愛らしいイケメンから男前になるから俺、困っちゃうわ!!
そしてそのイケメンスマイルにほっぺたが熱くなる俺も困っちゃうわ!
「ゆっきー…」
「何でござろう。」
「…そういうんは女の子に言うた方がええよ。」
「なっ、破廉恥…!」
あ、でもすぐにいつものゆっきーに戻ったから大丈夫っぽい。
照れた顔が可愛いからいつものゆっきーっぽい。
ぬん!
「む。」
「ゆっきー?」
実はいっこお兄さんやったゆっきーの隣をてっくてっく。
うろちょろしたらお兄さんゆっきーが怖いからちゃんとお隣をてっくてっく。
たまに「こじゅさーん」とか「こーちゃーん」とか呼んだりして、てっくてっく。
ほんならゆっきーがな、お空を見上げたん。
ぬ?
どないしたんゆっきー。
何かある?
鳥とか?
俺も一緒のとこ見てみたんやけど、煙が漂ってるだけで何も見えへんしやー。
ほんまあの煙なんなんやろ。
すすけた臭いはきつくなるし。
眉間に皺寄せながらお空眺めてたらちょびっと黒い点が。
「あれ?」
「真樹緒殿、朗報にござる。」
「ぬ?」
ろうほう?
何がろうほう。
ゆっきーがにこってイケメンスマイルを決めてくれた後、お空を指差したん。
ほんなら黒い点が段々こっちに近づいてきてなぁ。
ひゅんひゅん飛びながら近づいて、って…
「さっちゃん…?」
さっちゃんと、あれは。
あれは。
あのぴょんぴょん飛んでるのんは。
「っこーちゃん!!」
あれはこーちゃん!
絶対こーちゃん!
おった!
こーちゃんおった!
見つけた…!
「ゆっきー!こーちゃんおった!」
「よう、ございました。」
ゆっきーの着物引っ張ったらにっこり笑いながら頭を撫でてくれた。
もう子ども扱いなんて気にしない!!
こーちゃん。
さっちゃんが見つけてきてくれたんかなぁ?
一緒にお空飛んでるもんな!
やっぱりお忍びさん同士、気ぃ合うんやろうか。
仲良しさん!!
「いやいやいや!よく見て真樹緒…!」
俺様今、攻撃されてるから!!
結構ぎりぎりだから!!
真樹緒の忍、本気なんだけど!!
「ぬ?」
お空からひらりと戻ってきたさっちゃんは何やそこらじゅうに切り傷擦り傷いっぱいでした!
やぁ、こーちゃんはいつでも本気よ?
俺とこじゅさんの畑手伝う時も本気よ?
一緒に廊下を雑巾がけする時も本気よ?
ほら、こーちゃん何に対しても一生懸命やから。
「…伝説の忍と雑巾がけするの…?」
「うん。こーちゃんめっさ早いで。」
……
………
「…だろうね。」
ん?
どないしたんさっちゃん。
今度さっちゃんも一緒に雑巾がけする?
「って、こーちゃん!」
「(!!)」
そうやん。
さっちゃん、俺今落ち着いてる場合やないんよこーちゃん!
雑巾がけはまた今度ね今はこーちゃん…!
大事なこーちゃんと感動の再会なのですよ!
迎えに来たでこーちゃん!
元気やった?
酷いことされへんかった?
何でそんなボロボロなんちょっとこっちおいで…!
「(…!!)」
「あいたかったー…」
「(ぎゅう)」
こーちゃんに向かって全速力。
お久しぶりの素敵筋肉に飛びついた。
思いっきりぶつかっていったのにびくともせぇへんこーちゃんの素敵筋肉はいつも通り俺をぎゅーって抱きしめてくれる。
やっと会えたこーちゃん!
「何もされてない?」
「(こくん)」
「がんばったねえ。」
「(……こくん)」
「よしよしー。」
こーちゃんのふわふわな髪の毛をよしよし。
一緒に帰ろうなぁってよしよし。
背伸びしてよしよし。
もう大丈夫やからね、って見上げたらこーちゃんが頬っぺたすりすりしてくれました久しぶりやから、こーちゃんちょびっと甘えたさん!
でも可愛いから問題無し!!
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