さっちゃんが木と木の間をぴょんぴょん飛んで、ゆっきーはお馬さんに乗って。
平茸黒たんぽぽさんのおるお城?か、お屋敷?に向かってます。
あ、俺はゆっきーのお馬さんに乗せてもらってるん。
真樹緒ですー。
ちょっと夜が明けてきたかもしれません。
んー、おはようございます?
「あらー、凄い有様だねぇ。」
「これは火薬の臭いか。」
物凄い速さで森の中を駆け抜けたお馬さんのおかげでな、すぐに平茸黒たんぽぽさんのおうちに着いたんやけどやぁ。
うん、お屋敷は立派やで?
木ぃに囲まれて広いし、豪華やで?
でもなー。
「…ぬーん…」
もくもくもくってそこらじゅうに煙は凄いし。
建物らしきものは半壊どころやないし。
多分普段やったら綺麗やろうお庭には変な壺みたいなんごろごろ転がってて、しかも地面が抉れたりしてるし。
ぬーん。
なんてゆうか。
「すでにクライマックス…!」
結構クライマックス。
ちょっと待ってぇや。
俺今来たとこなんやけど!
俺の出番残しといてもらわんと困るんやけど…!
ちょっと見て!
さっちゃん!
ゆっきー!!
何この後の祭り感…!
俺の乗り遅れた感…!
俺が言い様の無いせちがらさをかみ締めてたのにやぁ。
「ねぇ、真樹緒。」
「さっちゃん?」
ほら見てぇや、って言うたのにさっちゃんはぽんぽんって俺の頭を撫でるだけなん。
ちゃうねんさっちゃん!!
もっとこう一緒に乗り遅れた感を感じて欲しいねん!
なぁなぁやるせないやろう?
せちがらいやろう?
一緒に「ぬーん」って言うてみようやぁ。
「あれは真樹緒殿が申されるから可愛いでござるよ。」
「可愛いとか無いもん。」
もー!
ゆっきーまで!
ぶうって膨れたらゆっきーが「佐助」って呼んで。
「了解。」
「…さっちゃん?」
「真樹緒。」
「う?」
「俺様ちょっとこの辺り見てくるから。」
ちょろちょろ歩き回っちゃ駄目だよ。
そこら辺のもの勝手に触っちゃ駄目だよ。
危ないから。
ってさっちゃんが。
ぬー。
ちょっとさっちゃん。
俺を何やと思ってるの。
小さい子ぉちゃうんやからそんな事せぇへんよ。
「旦那、真樹緒から目ぇ離さないでよー!」
「無論!」
「俺信用無い…!」
さっちゃんが塀の上やら瓦礫の上やらをぴょんぴょん飛んで行くのをやるせなく見送ってみても、さっちゃんがひらひら手ぇ振ってるだけで俺の心が特に癒される事はありませんでした!
むー。
そりゃあさっちゃんの手ぇひらひらは嬉しかったけど!
「俺は子供ちゃうもんー!!」って叫びながら手ぇ振り返しておきました行ってらっしゃいさっちゃん!
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