勝ち戦だった。
完全なる伊達の。


その証拠に自軍の大将がしかけた奇襲は見事成功し、北条軍の撹乱を誘った。
慌てふためき背後を取られた北条が早々に戦意を喪失したのも策通りである。
雑兵共が降伏してしまえば残るは大将の北条氏政ただ一人。
高みだけを目指す主はその姿を見とめ口角を上げ不敵に笑った。


追い詰められ逃げ出した北条氏政は山中の山城へ立て篭もっている。
好機は逃すまいと主は駆けた。
追っ手もかからない山道を走るのは容易い。
隻眼を輝かせる主に苦笑う。
その背を見つめ、広くなったと感慨深く目を細めた時、うす暗い気配が。


「は、見ろよ小十郎。」


special guestだ。


「あれは…」
「ただの忍じゃ、なさそうだ。」
「……まさか、」


黒脛巾から情報は入っていた。
しかし戦が始まってもその姿は全くと言っていい程見えず、その存在を怪しんでいた矢先に現れた黒い影。


「北条が雇ってたってのは本当だったみたいだなァ。」


伝説の忍。
風魔小太郎。


「(…)」


無言で武器を抜く伝説の忍に隙は無い。
なるほど伝説とうたわれているだけはある。
ぴりぴりと身を切るようなその殺気に思わず主を見ると、嬉々として受け流していて。
何とも大したお方だと、その成長のご様子に自身の気合も入った。


「政宗様、ここは小十郎が。」


一歩前に出た忍に立ちはだかる。


「Ha!coolじゃねぇか!」


いいぜ上等だ。


「…先に行くぜ小十郎。」



すぐ来い。
暗に含んだ台詞に御意にと小さく敬を。
そしてご油断召されるなとその背中に声をかけ、伝説だといわれる忍に対峙した。


山城に続く道で
纏わりつく空気が鋭利でとても重い。
呼吸する事を妨げられるような緊張は、今までに感じだ事が無い。


昂ぶる。
ぶわりと背筋が泡だって刀を構えた。



そう、自分が覚えているのはそこまでだ。



何度か攻防はあった。
それは一刻は続いた持久戦だった。
そして暫く睨み合いが続き、事は一瞬で。


相手に一刀を入れた手ごたえは確かにあった。
致命傷には至らせる事ができなかったかもしれないが。



ただ、その後己の身が傾いた。
力を込め、倒れるまいと踏ん張る足元が揺れた。
目の前が白く霞み、言うことを聞かない体はまるで人形のように地面に落ちた。



意識が完全に無くなる寸前、伊達の勝ち鬨が聞こえたのは覚えている。


  

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