ゆっきーがお空高く飛んで行ってな。
赤いもふもふしたおやかた様が清々しげにそんなゆっきーを見送ってな。
俺はやねぇ、おやかた様の背中を見ながらうずうず。
ちょっとやったら俺も呼んでみてええかなーなんて思いながらうずうず。
ちらちらおやかた様見ながら様子うかがってみたりしてる真樹緒ですよ。
こんばんは!
「ぬぬぬー。」
「真樹緒?」
「なぁ、さっちゃんー。」
「どうしたの。」
旦那ならすぐ戻ってくるよ、ってさっちゃんが俺の頭を撫でてくれるけどちがうんちがうん。
そりゃあゆっきーも心配やねんけど。
今さっきお友達になったゆっきーもとっても心配なんやけど。
遠くの方から「おおおぉぉぉぉ!」なんて声がこっち向かって聞こえてくるから多分大丈夫やと思うー。
何でおれが今うずうずしてるかってゆうたらね、ちょいとおやかた様の事なんですよ!
ここで俺も「おやかた様ぁぁぁぁ!!」って叫んだらどんな空気になると思う?
「………やりたかったの?」
あれ。
「うん。」
ちょびっとね。
やぁってや!
おやかた様とゆっきー何や楽しげやったやん!
二人で熱く叫んでたやん!
あれやりたい!
俺もやりたい!
俺が「おやかた様!!」って呼んでおやかた様が「真樹緒!!」って呼ぶん。
どお!
さっちゃんどお!
ぐ、って期待をこめてさっちゃん見上げてんけどやぁ。
「何か面倒臭いから駄目。」
「ぬーん。」
さわやか笑顔のさっちゃんに、その笑顔の通り爽やかに断られました。
さっちゃん。
たまにシビアなさっちゃん。
でも有無を言わせない雰囲気のさっちゃん。
おおお…
ちょびっとおシゲちゃんに似てるさっちゃん…!
「む。お主、」
「う?」
俺がさっちゃんに絶対に逆らえない何かを見いだしてたら、頭をわしって。
「おお?」
おっきな手ぇに頭をわしっと掴まれたん。
ぬー?
今までにないおっきさやで。
俺の頭すっぽり入ってしまうおっきさやで。
わしって掴まれたら、今度はうりうりって。
おおー。
多分撫でてくれてるんやろうけど、頭ぐらぐらゆれるんー。
「これはまさか!」
これは。
このおっきい手ぇは!
「おやかた様!!」
「お主が真樹緒か。」
「はい!真樹緒です!」
頭ぐりぐりされたまま見上げるとそこにはやっぱりおやかた様が。
おやかた様、ちょっとおててがこしょばいで!
あんまりそれやられたら髪の毛ももさもさになってしまうよ!
でもちょっと楽しくてけらけら笑ってたら、おやかた様が俺をひょーいってだっこしたん。
やあ最近おれ自分の体重がちょう不思議。
いくらおやかたさまがおっきい甲斐の虎やってゆうても!
ぬー。
ちょっと肥えたと思うのにやー。
「怪我を負った伊達のを追ってきたと幸村が申しておった。」
どんな豪傑かと思うたら。
誠、愛きものではないか。
そう言っておやかた様は俺をもっと高く持ち上げて。
まるで高い高い!
おやかた様も力持ちね!
「おやかた様。」
「む、どうした。」
「初めましてー。」
おやかた様の肩に手ぇおいてぺこりー。
こんなとこからかんにんですってぺこりー。
お邪魔してます!
ほんならおやかた様、にっこり笑ってくれて。
「よう、来た。」
どんな恐ろしい人かと思ったおやかた様はとても素敵なおじさまでした!
優しい笑顔が眩しいいけめんなおじさまでした!
にっこり笑って俺をだっこしてくれてるん。
しかも片手で!
力持ち!!
ぶっといおやかた様の素敵な二の腕に乗ってへへへって。
「真樹緒。」
「はい?」
「ゆるりと話がしたい。」
暇はあるか。
おやかた様が俺の顔を見上げながら言うん。
うん?
お話?
やぁ、それ俺もある!
俺がおらん間、政宗様をお願いしやなあかんしやぁ。
「え、ちょっと真樹緒。」
「ぬ?何?」
どうしたんさっちゃん。
おやかた様にだっこされたまんま今はちょっと目線が低いさっちゃんを見る。
ぬー?
何だかちょっぴり顔が怖いさっちゃん。
「まさかとは思うけど。」
「んん?」
追いかけるつもりじゃないよね。
右目の旦那を。
って、やっぱり怖い顔のさっちゃん。
「え、おっかけるよ?」
当たり前やん。
こーちゃん迎えに行かなあかんしやぁ。
こじゅさんも心配やし。
何より平茸黒たんぽぽに色んな事を謝らせたい訳なのですよ!
やから行くよ?
「うっわぁ、俺様今伊達さんの気持ちが分かっちゃった。」
ぬ?
伊達さん?
伊達さんって政宗様の事?
やあでもさっちゃん政宗様の事は竜の旦那って呼んでたよねじゃあおシゲちゃん?
何でここでおシゲちゃん?
「はっはっはっ、真樹緒は中々の豪者よ。」
「えらもの?」
何者?
俺が首傾げるんをおやかた様が楽しそうに見ててやぁ。
さっちゃんは呆れた様な顔で「あーもう、本当」なんて言いながら首を振ってる。
なにー。
どうしたん二人とも!
俺に内緒?秘密?
もー寂しいやん。
おやかた様の赤いもふもふを、もふもふしながら「もー」ってゆうてたら。
「素晴らしき一撃にござりましたぁぁぁお館さぶあぁぁぁぁぁぁ!!」
ゆっきーがものすごい俊足でお庭に戻ってきました!
今度は庭石を破壊してました!
おおお!
ゆっきー、さっきぶり!
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