俺がカイの虎なおやかた様のとこに向かってたら突然イケメンが障子ごと吹っ飛んできました。
あれはさっき政宗様を運ぶ時に手伝ってくれたイケメンさんやと思います。
実は心臓が飛び出るぐらいびっくりしたのは内緒にしてて欲しい真樹緒ですこんばんは!
「さっちゃん、あれ…」
「ああ、ほっといて大丈夫だから。」
まじで。
でも松折れてもうたで。
壁にめりこんでもうたで。
お庭めちゃくちゃやで。
結構ぼろぼろやで!
しかもあのイケメンさん多分、俺とそんな歳が変わらへんぴちぴちの十代やん。
十代って言うたらあれやなんやで。
ガラスの十代!
中々複雑なお年頃なんやから!
「俺ちょっと見てくるー。」
「あ、真樹緒!」
さっちゃんが呼んだけどやっぱり気になるやん。
やからお庭に飛び降りた。
広いお庭でやあ、おっきい池もある。
鯉とか泳いでるんかなぁ?
後で見てみよー。
今はあのイケメンさんの方が先!
お庭の端っこに転がってるイケメンさんのとこに走って行って大丈夫ですか?って顔覗き込んだん。
「大丈夫―?」
「ぬ?」
びっくりする程吹っ飛んでたけど。
思い切り松にぶつかってたけど。
イケメンさんの髪の毛についた土を払って、ほっぺたについた土も払って大丈夫ですかー?って覗き込んだ。
「貴殿は政宗殿の…」
「さっきはありがとうございますー。」
一緒に政宗様運んでくれてありがとうございますー。
俺一人やったら絶対無理やったと思うん。
ほんまにありがとうございます。
へへ、って笑ったらイケメンさんも笑ってくれた。
ぼろぼろになりながら笑ってくれた。
ちょびっと痛々しいけど流石イケメン爽やかです!
「政宗殿のご容体はいかがか。」
「さっき目が覚めてちょっとだけお話できたん。」
いっぱいお話したで。
恥ずかしい事に、俺泣いてしまったんやけど。
政宗様ちゃんと最後まで聞いてくれたんよ。
ほんで「心配かけたな」って、俺の頭撫でてくれて。
俺今とっても幸せ。
「それはようござった。」
「ぬん!」
ありがと!
イケメンさんと一緒ににっこり。
安慮な事にござる、ってにっこり。
やー、何か癒されるんこのイケメンさん。
素敵な笑顔のイケメンさん。
どう言うたらええんやろ。
そうやなー。
……
………
わんこ?
うん、わんこ。
……
………
可愛い!!
「へへー。」
「?いかがされたか。」
「いえいえ何にもー。」
ここにも可愛いイケメン見つけちゃったー。
素敵な出会いね!
笑いながらイケメンさんの頭を撫でてみた。
もう土ついてへんねんけど、ちょっと頭撫でたくなったから我慢せんと撫でてみた。
髪の毛が柔らかい!
ふわふわ!
「少し失礼してもよろしいか。」
「ぬ?」
イケメンさんの頭を撫で撫でしてたらむくりとイケメンさんが起き上がって、今度は俺の頭を撫でられた。
それから俺の体をかるがるひょーいって持ち上げてしまったん。
おんなじ年頃やのにこの力持ち加減は一体何事ですか!
政宗様の時も思ったけどほんまに力持ちねイケメンさん…!
何よー。
何なのよー。
これはやっぱり俺に対する挑戦ですか!
イケメンさんのカブトムシのようなお腹が眩しい真樹緒ですよ。
「やあでも…、」
ぬん。
でもどうしたん?
何で今俺だっこ?
そんなタイミングやったっけ?
びっくりしながらイケメンさんの顔を見ても、平気な顔で俺をだっこしたまま廊下にてくてく歩いて行くし。
ぬー?
運んでくれてる?
でも俺自分で歩けるよ?
「足が危のうございます故。」
しっかり掴まっておられよ、って笑うん。
ああ、そういや俺裸足のまんま走ってきたんやった。
ぞうりとか無かったから足、そのままやった。
「やあほんとにまぶしー…」
爽やかなイケメンって周りにおらんかったから目がチカチカするわー。
クールなイケメンとか渋いイケメンとか、可愛いイケメンはおるんやけど。
俺の周りにいっぱいおるんやけど。
あえて名前は言わんけど!
しかも優しいジェントルマン!
若いのにジェントルマン!!
足とか別に汚れても別にええのにー。
俺けっこう体重重いのにー。
「なんのこれしき。」
木の葉のような軽さにございます!
「それも複雑―」
俺、食べ盛りの男の子よ?
お腹にお肉とか結構ついてるんよ?
もー。
イケメンさんちょっと言いすぎやなーい?
「あ、」
ってそう言えばやぁ。
とっても今更やけどやぁ。
「なぁなぁ、」
「いかがされた。」
「力持ちさんのお名前は?」
運ばれながら足をちょっとバタバタ。
ほら何や恥ずかしいやん自己紹介て。
しかも今更やし!
聞いたらイケメンさんはきょとんと首をかしげてしまって。
なー。
やっぱり今更やんなー。
でもほら名前分からんかったら不便やん?
そんでもってちゃんと名前で呼びたいやん?
やから良かったら教えてほしーなーとか思ってる訳ですよ。
「俺ね、真樹緒って言うん。」
よろしくー。
政宗様のお城でお世話になってます!
イケメンさんの頭をぽふぽふ叩きながらお名前は?って首傾げたらイケメンさんのきょとんとした顔がふわって解れてやぁ。
「おお…」
男前の本気笑顔って迫力あるね!!
イケメンさんの周りに星が見えるわ。
眩しい!
「某は真田幸村、幸村とお呼び下され。」
「ゆきむらさん…」
へーへー。
ゆきむらさん。
さなだゆきむらさん。
ほーほー。
ゆきむらさん可愛い名前ね。
でももうちょびっと可愛く呼びたいね。
ぬーぬーぬー。
どうしましょ。
イケメン的な感じを残して、可愛い呼び方ないかしらー?
「にょー…」
「真樹緒殿?」
首を傾げてるゆきむらさんの頭をもふっとしながら考える。
すぐ決めるから待ってやー。
ずっともふもふしてたらゆきむらさんに「真樹緒殿は面白いでござるなぁ」って笑われました!
「ぬー…」
「…何考えてるか大体分かるけどねー。」
「佐助、真樹緒殿を。」
「はいはいお受け取りしますよ。」
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