「真樹緒。」
「ぬん?」
「館が見えたよ。」
「まじで!!」


さっちゃんにだっこされてお山をひょーいと飛び越えて。
もう辺りは真っ暗でやぁ、ちょびっと眠たくなってきたなぁーと思ってたらさっちゃんに「真樹緒」って呼ばれてうとうとおめめがパッチリ覚めた真樹緒ですよこんばんは!


「どこ?」
「ほら、明かりが見えるでしょ。」
「ぬ?」


さっちゃんが言うたけど辺りはまだまだ木がいっぱいでよく見えへんの。


どこー?
明かりどこー?
俺そんな目ぇ悪くないんやけどなー。
さっちゃんどこー。


「真樹緒、あっちだよ。」
「お?」


さっちゃんが俺を肩車。
ひょいって肩車。
結構簡単に肩車…!


「おお…」


力持ち。
細く見えるのにさっちゃん力持ち。
政宗様とかこじゅさんとかより断然細く見えるのにさっちゃん力持ち。
俺結構重いよ!


「俺様脱いだら凄いんだよねー。」
まじで!!
まじで。


さっちゃんがけらけら笑う。


おおー…
そっか。
さっちゃん凄いんや。
ムキムキとか!?
さっちゃん脱いだらムキムキとか!?
お腹の腹筋とか割れてるんやろうか。


どうしよう。
さっちゃんのお腹カブトムシみたいなお腹やったら。
どうしよう!!


どうもしないよ。
ぬーん。


甲虫って何、ってさっちゃんがため息吐きながら俺を見上げた。


やぁ、カブトムシはカブトムシやん。
ほらお腹ムキっとしてる虫。
子供たちにちやほやされてる虫。
でも俺的にはクワガタ派やねんけど!


「はいはい。」
「さっちゃん冷たいー。」


もっとこう一緒に盛り上がってくれなくちゃー。
夏を代表する虫ですよ!
あれを持ってるだけで皆の人気独り占めですよ!


「多分甲斐の山に腐るほどいるよ。」


欲しいの?
ひょーいって俺を見上げながらさっちゃんが森を飛ぶ。
あー。
しかもちょっと笑ったなー。
カブトムシとクワガタ馬鹿にしたらあかんねんで!


「まじで?」
「まじで。」


やぁ、でも腐るほどおったらちょっと嫌かなー。
カブトムシとクワガタがわっさわっさおったら嫌かなー。
さっちゃん、俺一匹ずつでええかもしれやん。
カブトムシとクワガタ。



「って真樹緒。」
「ぬ?」
「いつの間に虫の話になったの。」
「ああ!」



あぁ、ほんまや。
いつの間に!!
ほらやっぱりあの二匹って人気者やから。


「関係無いよね。」
「ぬー。」


ほらほらちゃんと見て、ってさっちゃんが指差した先にはぽっと明かりが灯ってて。
じぃっと見てたらやぁ、どんどんその明かりが近づいてくる。


うん?
さっちゃんの頭をしっかり掴みながら目ぇ凝らしたら何と目の前におっきいお屋敷がありました!


「俺様達が動いてたんだよ。」
「さっちゃんすごいねえ。」


こっちに明かりが近づいてたかと思ったらさっちゃんが物凄い速さでバビュンと飛んでたからそう見えただけなんやって。


おおー。
さすが。
さすがお忍びさん。


「お館の庭に下りるからね。」


落とすつもりは無いけどちゃんと掴まってなさいよ、って言うさっちゃんの頭をしっかり持った。


ほんなら突然さっちゃんが急降下。
ふわって底が抜ける感じで急降下。
さっきまでひょいひょい飛んでたのと全然違うん。
ぐーんていきなり体が浮いてまう感じ。


えーと、何やろう。
ほらあれ。
あれに似てる。


エレベーター…!
「ん?何?」
さっちゃんこれ、ちょびっと怖い!


結構な勢いで落ちてる。
さっちゃんの肩から足浮くぐらいの勢いで落ちてる。
なぁさっちゃんほんまにこのまま落ちていって大丈夫なん!
ぺしぺしさっちゃんの頭を叩いたんやけど。


「俺様にまかせとけー。」
軽い!!


爽やかな笑顔が返ってきただけでした。
よそ様のおうち近くで久しぶりにせちがらい!!

  

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