「真樹緒はさー、」
「んん?」
「きっと奥州で可愛がられてたんだろうねー。」
そんな事言ってる俺様もさ、何かもう真樹緒が馬鹿なのか可愛いのかよく分かんなくなってきたよ。
どうも。
人呼んで猿飛佐助、ゆたんぽみたいな真樹緒を抱いてただ今お仕事遂行中ってねー。
「うーん、どうやろー?」
「竜の旦那なんて溺愛してそう。」
ふわふわと柔らかい真樹緒の髪が頬を撫でる。
よく分からない子供だと思った。
底が読めず、だから気味が悪いとも思った。
「政宗様は優しいで?」
「だろうね。」
どうして見ず知らずの俺についてきたんだろう。
警戒心の欠片も無く。
そんな事を思っては暗鬼し、どれ程の子供なのかと勘繰った。
けれどそんなもの、何の意味も無くて。
「ねぇ真樹緒。」
「うぃ?」
「何で俺様についてきたの?」
「へぇ?」
俺が松永の配下だとは思わなかった?
騙されているんじゃないかと一度も疑わなかった?
胡散臭い忍をどうして信じたの。
「、やってやぁ…」
さっちゃん俺をカイに連れてってくれるってゆうたやん。
カー君連れてきてくれたやん。
「それだけ?」
「?他に何かあるん?」
ってか俺の方が聞きたいんやけど!
何でさっちゃん俺をカイに連れてってくれてるん。
めっさ嬉しいんやけど、俺ら初めましてやったやんか。
なぁ、なぁ、何で?
さっちゃん何でー?
「内緒。」
「ぬーん。」
真樹緒はそういう子なんだ。
俺なんかが図り知る事なんてとても出来やしない子なんだ。
ああうん、まったく本当。
俺様自分がばからしくって、おかしくって、笑いがとまらない。
「真樹緒。」
「なん?」
そしてこれは何だろう。
何なんだろう。
腹の奥が、胸のあたりが、ぽかぽかぽかぽかと熱い。
熱くてやたらと心地が良い。
「真樹緒はすごいねぇ。」
「えー?」
何が?
こっちを見た小さな顔に思わず口元が緩む。
真樹緒は凄いよ。
本当に凄い。
まさか出会ってたった一日足らずでこんなにも。
「さっちゃん?」
「あー、もう可愛い、可愛い。」
「突然どうしたんさっちゃん…!」
何、その顔。
俺様心外なんだけど?
頬杖をつきながら真樹緒の顔に指を伸ばす。
可愛らしい顔が台無しだねー、ほら眉間の皴伸ばしてあげるよ。
「…ぐりぐり痛いん。」
「本当はそんなに痛くないんだろ。」
「ばれてた!!」
「おばかさんー。」
「きー!」
ほらもう。
どうしたって真樹緒は俺様を笑わせてしまうんだ。
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