「さっちゃんはねー、バナナが大好きほんとだよー」
どうもー。
さっちゃんの背中でごろごろしてたら危ないから前おいでーって言われて今はさっちゃんにだっこされてる真樹緒ですー。
前ってどうやって行くんって聞いたらおもむろに背中からひっぺがされて、森の中をびゅんびゅん進んでるっていうのにその状態のまんま前に放り投げられた真樹緒ですー。
生きた心地がしませんでしたこんにちは…!
でももうすぐ暗くなるからこんばんは!
ぬん!
「だけどちっさいかーら、バナナを半分しーかー食べられないのー」
お山を越えたらカイはもうすぐ、ってさっちゃん言うてたんやけど、やっぱりもっとずっと遠くて日が暮れてしまったん。
森の上から見た夕焼けはものすごい綺麗で、時間を忘れるぐらい綺麗で。
さっちゃんにだっこされながらずっとそっちを見てたらさっちゃんが木の上で止まってくれてやあ、あのでっかくて綺麗な夕焼け最後まで見れたん。
ぬーん。
優しいんー。
「かわいそうね、さっちゃん。」
ねー。
かわいそうやね、さっちゃん。
バナナ半分しか食べられへんの。
わかる?
ただでさえバナナそんなおっきく無いのに半分やねんで。
わかる!
「はいはい、気が済んだ?」
「ぬー…」
さっちゃん冷たいー。
軽いー。
もっとこう乗ってきてくれなくちゃー。
ノリノリでつっこんでくれなくちゃー。
真樹緒君が泣いてしまいますよ。
「よーし、よし。」
「やから軽いー。」
俺が渾身の一曲「さっちゃん」を歌ったのにやあ。
これはあれなんやで。
佐助のさっちゃんとバナナのさっちゃんの見事なコラボやねんで。
ただの「さっちゃん」やないねんで!
俺の頭を撫でてるさっちゃん見上げたら「さっちゃんよりばななが気になるんだけど」って。
「ぬ?」
知らん?
バナナ。
「聞いた事ないねぇ。」
食べ物?って首をかしげたさっちゃんが可愛かった。
ちょう可愛かった!
でも可愛い可愛いってゆうたらさっちゃんに頭わしっと掴まれるから言わへんけどね!
ちょっと前にきゅーとの意味を教えたら「きゅーとなのは真樹緒でしょ」って頭わしっと掴まれてん。
ここにも素敵握力が…!
てゆうか俺もきゅーととちがうしー。
「…」
「えー、なんその面倒くさいもんを見るような顔。」
俺きゅーとちがうもん。
男前めざしてんねんもん。
「…」
「さっちゃん、その顔やめてんかー。」
無理でしょ、って顔止めてんかー。
俺切ない!
「で?」
「うん?」
「ばななって何?」
また南蛮語?
さっちゃんが木をひょーいって飛びながら言うた。
おお…
バナナがひらがなや。
まさかバナナをこんなイケメンからひらがなで聞くとは思わんかった。
可愛い!
言わんけど!!
「バナナはな、果物の名前やで。」
「果物?」
「甘い食べ物なん。」
「ああ、水菓子の事?」
ぬー?
みずがし?
お菓子なんかなぁ…
果物やと思うんやけどやー。
よかったら今度さっちゃんもバナナ食べてみる?
腹持ち良くってなぁ、栄養たっぷりで、しかも甘いねん。
美味しいねんでー…って、
「…」
あかんやん。
バナナ無いやん。
ここ俺がおったとこちゃうし。
俺がおったとこやったら家にあるんやけど。
バナナハンガーにかかってるからすぐにでも食べてもらえるんやけど。
「ぬーん…」
「え、ちょっと何突然暗くなってんの。」
やってバナナここに無いんやもん。
せっかくさっちゃんにバナナ食べてもらおうと思ったのにやぁ。
ほんならホンマの「さっちゃん」やったのに。
傍でもう一回歌うのに。
多分こっちのさっちゃんはバナナ全部食べれると思うけどなー。
でもあえて半分で!!
「ぶー…」
「ほら、よく分かんないけど元気出しなよ。」
ぽんぽん俺の頭を撫でるさっちゃんにぶー。
やってバナナ。
食べて欲しかったん。
さっちゃんとバナナ。
政宗様のお城にバナナなんか絶対無いしやー。
「さっちゃーん。」
「うん?どうしたの。」
「…、ナシやったらあるんやけど…」
お城に一杯。
ナシの木あって、政宗様と一緒に収穫したん。
やまなし。
食べる?
持ってきたらよかったなぁってさっちゃんの首につかまったんやけどやー。
「ごめん、真樹緒。話が全く分かんない。」
「ぬ?」
さっちゃんがとってもまじめなお顔でその首をふりました。
その顔がまじすぎて何だかこれ以上お話続けられるふんいきじゃありません真樹緒です!
俺ナシのお話してただけやったんやけどなあれでも初めはバナナやったかもしれへんぬーん…!
←book top
←キネマ目次
←top