春が近づいてきた奥州は、それでも日が落ちると少し肌寒い。
「こーちゃん、お城の屋根に連れてって」と小さく呟いた主の体を抱き、暫く夕暮れを眺めていたが辺りも暗くなり、僅か星も見え始めて風魔は真樹緒の顔を覗き込んだ。


「(…、)」
「ん、もーちょっと。」


どうもー。
何だか最近ちょびっと元気が無い真樹緒君ですよー。
こんばんは。


政宗様がカイへ向かって三日ぐらい。
たぶん、三日ぐらい。
政宗様らがカイへ向かってから何や時間がながーく感じてやー。
もしかしたら一週間ぐらい経ってるんちがうん?ってゆうぐらい毎日が長くって。
俺もうあれからどれだけ経ったか分からへんの。


今頃政宗様とこじゅさんどうしてるんやろう。
ちゃんとカイに着いたかなぁ?


「なぁ、こーちゃん。」
「(?)」
「カー君、政宗様に会えたかなぁ。」
「(こくこく)」


ちょっと前にカー君にまたお手紙運んでもらったん。
お手紙ゆうてもその日にあった事とか、お花植えた事とか、えーっと。
政宗様元気―?とか、こじゅさん元気―?とか何でも無い事やけど。


あー、あと。


「……」


あと、
真樹緒はちょびっとさびしんぼですよーとか。
いつ帰ってくる?とか。
こーちゃんにカイの方向聞いて、お城の屋根からそっちばっかり見てるんやけど薄紫色やったお空が真っ黒になってくだけで。
カー君は戻ってきてくれへんし、さぶいし。


「(…、)」
「ん、今日はもうもどろうかー。」


ぎゅうってしてくれたこーちゃんの頭をなでなで。
ふわり、ってこーちゃんが飛ぶ。


大丈夫。
俺、大丈夫やで?
こーちゃんおるもん。
政宗様やこじゅさん今はお仕事で、すぐに帰ってくるってゆうたんやもん。


「(…)」
「ん?」
「(ぎゅう)」
「やあ、あったかい。」


くっついてきてくれたこーちゃんに笑って、ぎゅーのお返し。
ありがとこーちゃん。
一緒におってくれてありがと。
俺、結構寂しがり屋さんやったみたい。



「(なでなで)」
「ぬん…」


とん、ってこーちゃんが俺の部屋の窓に降りたらすでにお布団が敷かれてた。
もちろん今日もこーちゃんと一緒。
政宗様らがカイに行ってからようやくこーちゃんが一緒に寝てくれるようになったんやで。
やぁ、無理やり引きずり込んだとかそんなまさかー。


……
………


まさかー。


「(じっ)」
ぬん…視線がいたい。


でも、朝起きたらすでにこーちゃんは布団から出て枕元にしゃがんでるんやけどね。
うん、あれには俺毎朝ちょうびっくりする。
いつ布団から出るんやろうなぞ。


「ではではお休みしましょー。」


布団をめくってぽんぽん叩いたらこーちゃんが背中の刀を下ろした。
つけてたら寝れやんもんね!
はい、こーちゃんどうぞー。
寝るよー。


後はこーちゃんマジックであのロウソクの火ぃ消すだけ!
こーちゃんお願いね、ってこーちゃん見上げたんやけど。



「(…)」
「、こーちゃん?」



こーちゃんの様子がちょっとへん。
何かを睨むようにじぃっと窓の外を見てるん。
カー君帰ってきた?っておんなじように外見ても俺には暗い空が広がってるだけに見えるし。
どうしたん?って手を伸ばしたらこーちゃんが下ろした刀をまた構えた。


「こーちゃ、」
「(ふるふる)」


駄目。


こーちゃんが俺の前にずいっと出る。
こーちゃんの口から音の無い声が聞こえる。
いつものこーちゃんと違う。
優しいこーちゃんと違う。
見上げたこーちゃんはぎり、って唇を噛んで。


「(…)」
「こーちゃん…?」


おもむろに懐から出した尖ったやつを窓に向かって投げた。
ビュビュビュって目にも留まらぬ速さで投げた。


ええ!
何で!


そんでもって暫くしたらその尖った奴戻ってきた。


何で!!


もちろんこーちゃんが刀で弾いてくれたんやけど!
それにしたってちょう危なかった何でどこから戻ってきたんこわい…!

  

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