人が爆発した。
まさかと思う前に小十郎の体は動き、主である政宗の体を爆風の中確かに抱え込んだ。
爆風の勢いで崖を転がり落ちてもその手は離さなかった。


「く…」


爆発したのは一度では無い。
自分達を囲むように立て続けて。


馬の嘶きや悲鳴が入り混じり、煌々と燃え上がった森が見えた。
煤が黒々と空を舞い上がる。
使い物にならない耳を押さえながら小十郎はゆっくりと起き上がった。


「っ政宗様!!」


ばらばらと背中を打ち付ける瓦礫も構わず覗き込んだ主の顔色は青い。
かくんと力なく垂れた頭からはどろりと赤黒い血が流れている。
腕はぐにゃりとあらぬ方向に曲がっている。
足は、体は。


「政宗様…!」


言葉も出ず、小十郎は息を呑んだ。


指が震える。
まさか、と恐怖が襲う。
同時になぜ守れなかったのかと。


「政宗様、」


あなたはこんなところで立ち止まって良い方ではない。
志半ばでそれを挫く事など許されないのです。


世の平定、そして安寧。
この戦乱の世の終息を、あなたは願ったではありませんか。



「は…」



焦るな。
自分が取り乱してどうする。
俺は片倉小十郎、政宗様の右目。
主を信じ、忠節を捧げ、共に歩むのが己の務め。


「…ご無礼をば。」


そろりと小十郎が耳を近づけた政宗の心の臓は弱々しく、だが確かに動いていた。


主は生きている。
その生命力で息をしておられる。
早く。
早く主を安全な場所に運ばなければ。
傷を負った政宗を背負い小十郎は歩き出す。


ここはもう北条と甲斐の国境近くだ。
このまま甲斐に入り、武田信玄の力を仰げば。


「…暫く辛抱下さいませ。」


崖の上を見上げれば共にここまで走ってきた野郎共の声が聞こえた。
声を張り上げればこちらに気づき。


「片倉様―!!!筆頭がいねぇーんすよ!!!」


大丈夫すかー!!!


「政宗様はここにおられる!」


大丈夫だ、お前らはそのまま甲斐に向かえと叫んで一歩を踏み出す。
力なく、重みの増した主を背中に息を吸い込んで。



「参りますぞ。」



奥州では真樹緒が待っております。
あなたの無事を願って過ごしている事でしょう。
怪我などをせずに帰って来いと告げられたのでしょう。


その真樹緒に何と申します。


もう暫く。
もう暫く耐えられませよと。
自らも重く鉛のような足を引きずりながら小十郎は森を進んだ。


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次はやっとこ迷彩さんと幸村さんが。
進むのが遅いのはやはり内容がシリアスぶっているせいかと。
そこぬけに明るくギャグな番外編を書きたいです。

  

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