こじゅさんのお鍋はとってもおいしかったです!
白菜やろー?
ごぼうやろー?
いわしのつみれにー、大根も食べたで!
最後のシメにはおうどん入れてお腹も満腹真樹緒ですこんばんは!


「うまうまー…」
「(?)」
「んー?おいしかったなぁーって。」


後ろにおるこーちゃん振り返って、あのつみれ俺もお手伝いしたんやで!って笑う。

ちゃんとこーちゃんも食べてな!
さっきは一緒に食べられへんかったん。
お忍びさんって皆と一緒にご飯食べへんねんて。
そういやこーちゃんが何かを食べてるとこはまだ見たことないなぁ。
おやつのおさそいしてもふるふるって首ふられちゃうしー。


「こーちゃん、」
「(?)」
「ちゃんとご飯たべてる?」
「……、………(こく、ん?)」


沈黙が長い…!
怪しい!!
やあやあこーちゃん。
ご飯食べやなあかんよ。
奥州のお米、おいしいねんで。
お野菜かってとってもおいしいねんで。


「こーちゃん。」
「(?)」
「お忍びさんはあんまりご飯食べやんでも大丈夫やって聞いてるけどね、」


でもやっぱり人間なんやし、ちゃんと一日に必要なご飯は食べてね?
奥州はまだまだ寒いし、ただでさえこーちゃんちょっと細いねんからな?
俺、こーちゃんが倒れたりしやんかとっても心配よ?
ごはんが嫌やったら俺と一緒におやつでもいいから食べよう?
分かった?
お顔を覗きこんだらちょこんと頷いてくれました!
いい子!


「ぬんぬん、後は政宗様待つだけ!」


お腹いっぱいでお部屋に入ったらもうおふとん敷いてくれててな、ごそごそもぞもぞ潜り込んだらこーちゃんがふっと屋根裏に消えました。


ぬー…
いつになったらこーちゃんは俺といっしょにおふとん入ってくれるんやろう。
俺いまかいまかと待ってるってゆうのにー。
今日は政宗様来るけど、明日やったら大丈夫やのに。
おふとんってゆうかしいてくれてる夜着はおっきいから十分寝れると思うんやけどやー。


「真樹緒、」
「政宗様!!」
「入っていいか。」
「どーぞー。」


お早いおつきで政宗様!
どーぞどーぞ入ってや!

俺がこーちゃんが消えちゃった屋根裏をじっと見つめてたら扉の向こうから政宗様の声が聞こえた。
おふとんからちょっと乗り出して入ってや!ってお返事する。
ぬんぬん。
まだちょっぴりおふとんあったまってへんねんけどどうぞー。
でも政宗様が一緒に入ってくれたらとってもあったかくなると思うからどうぞー。


「待たせたか。」
「ううん、今おふとん入ったとこ。」


障子を開けて入ってきた政宗様は寝巻き姿でした。
やあきっとお風呂上りやねえ。
やったら今政宗様ちょうぬくいはず…!
ぬん!
早く!
ほらほら早く政宗様!
おふとんをぺろんって捲ったら政宗様がすかさず入ってきてくれました。
やっぱりぬくい…!


「ぬくぬくー…」
「おら、もっとこっち来い。」
「んー…」


やっぱり政宗様はあったかい。
湯上りやし素敵筋肉やしちょうあったかいー。
もっともっとってくっついてたらふ、ってお部屋の灯りが消えた。
二人でおふとんに入ったグッドタイミングで灯りが消えた。


あれ?
誰の仕業。


「お前の忍だろ。」
「こーちゃん?」


でも屋根裏に行ってもうたで?
あんなとこから消したん?


「伝説の忍には簡単なんじゃねぇか?」
「ぬん、」


そっかー。
簡単かー。
さすがこーちゃん。
さすが伝説のお忍びさん。
明日どうやってやったんか聞いてみよ!
分ったら政宗様に教えてあげるね。
頭を撫でてくる政宗様に笑って、もうちょっとくっついた。


ほかほかぬくぬく。
しあわせ!


「あ、」
「Ah?」


そうやん政宗様。
あれやって。
あれ。


「Ah―?」
「ほら、あれやん。」
「?何だ?」
「うでまくら!」


してー。
腕枕してー。
俺、腕枕した脇の狭いとこに入るん好きなん。
ぬ?
ほら俺すみっこ好きやから。


政宗様の腕を伸ばしてよいしょって頭を乗せた。
乗せた頭をちょっとずらして小脇に収まる。
ぬーん。
ジャストフィット!!


「へへ…」
「本当にお前は狭い所が好きだな。」
「なんか調度良い感じしやん?」
「しねぇよ。」


笑わんとってやー。
ええやん。
人の好みやんー。
それに政宗様、笑うてる場合ちがうよ。
何かお話あったんちゃうん?


「Oops、そうだ。」
「おもしろいお話?」
「いや、」
「?」


俺が聞いたら政宗様がちょっと困った顔をしたように見えた。
ぼんやり暗いお部屋でちょっとしょんぼりした顔をしたように見えた。
それに何や元気が無い感じ。
それでも優しく笑ってくれてるみたいやけど、何か、ぬん…さびしげ。


あれやあ政宗様。
何か嫌な事でもあった?
悲しい事でもあった?
お悩みごと?

俺でよかったら聞くけど。
政宗様がお話してすっきりするんやったら俺なんでも聞くけど。
じぃって政宗様みたらふわって笑われた。


「政宗様?」
「真樹緒、」
「うん?」
「俺と小十郎は明日甲斐に向かう。」


う?
かい?
カイ?
貝?


「お前、ここで待てるか。」
「ぬ?」


暗闇の中、政宗様の顔がぼんやり見える。
やっぱりまだ元気が無くってちょびっと心配そうな顔。
政宗様、奥州からどこかにいってしまうん?
カイに行ってしまうん?

ぬん…カイ。
カイって遠いんかなぁ。


「…、」


そういえば、俺ここに来てずぅーっと政宗様やこじゅさんと一緒やったもんねえ。
離れるんは初めてで。
一人でお城におるんは初めてで。
離れ離れってきっと寂しいんやと思う。
こーちゃんおってくれるけど政宗様やこじゅさんとお話できやんのってすごく寂しいんやと思う。


でも、ねえ政宗様。


「政宗様、ちゃんと帰ってくるんやろう?」
「当たり前だ。」


用件が終わればすぐに戻る。
そう言って政宗様は俺の前髪をかき上げた。


「それやったら、待ってる。」


政宗様ちゃんと帰ってきてくれるんやろう?
こじゅさんとカイってとこに行っても戻ってくるんやろう?
お仕事でちょっとおでかけするだけなんやろう?
大丈夫。
俺、待てるよ。
お留守番出来るよ。


「真樹緒…」


やからねえ、すぐ帰ってきてね。


俺、こーちゃんと待ってるから。
おシゲちゃんと待ってるから。
政宗様とこじゅさんが帰って来るの待ってるから。
危ない事とかしたらあかんねんで。
怪我とか作ってきたら許してあげんへんのやから。
こじゅさんと一緒に、行った時と同じで帰ってきてな。


「お約束しよう。」


そんなら俺、お帰り!って飛んでいくから。
俺を受け止めて!って走って行くから。
飛んでいったらちゃんと受け止めてくれやんとあかんねんで。
避けたりしたら怒るんやから。
その後はぎゅーってしてな。
いつもみたいにぎゅーってしてな。


「な?」


寂しいけどやぁ、俺待ってるから。
はよ帰ってきて。
政宗様の胸に頭擦り付けてたら「真樹緒、」って政宗様に呼ばれた。


「政宗様?」


暗くてもう顔は見えやんかった。
政宗様のちょっと長い髪の毛が頬っぺたまで顔隠してたん。
でも腕枕してくれてたのにゆっくりその腕首からぬかれて、政宗様がとっても近いのは分かる。
何にも言わん政宗様はやっぱりゆっくり俺の両手首をつかんで。


「政宗様…?」
「真樹緒、」
「あ…」


政宗様の匂いがすぐそこやった。
もう鼻と鼻がくっつくぐらい。
ちっちゃく息を吐いたら政宗様が笑ったんが分かる。
もう、っていつもやったらここで俺も笑うんやけど。


「真樹緒。」


政宗様がいつもの政宗様やないん。
じっとな、俺を見てくるん。
けどどんな顔してるかわからへんから俺ちょっと心臓がどくどく。


「まさむねさま…?」


政宗様が近くて。
でも顔が見えやんくて。


「え…と、」


ずっとくっついてたから体ばっかり熱くて、熱くて。
何か、感じたことない雰囲気に頭がぼうって。


「まさ、」
「真樹緒。」


許せ。


「んっ…」


名前を呼ぼうと思った口をふさがれた。

くらくら。
くらくら。

ただでさえ息が出来ひんかったのに。
やわらかい、あたたかい、政宗様のくちびるのせいで。


「んーん!、」


とろけそう。
くちびるがとけてしまいそう。


「真樹緒…」
「あ、…ふ…」


空気が欲しくて口をおっきく開けた。
ちゅ、って恥ずかしい音が聞こえたけどもう俺あかんの。
頭動かへんの。
やわっこい何かが口の中に入ってきて俺の舌ゆるうく引っ張って、やっぱりとけそう。


指先が熱い。
顔が熱い。
息が甘い。


「んんっ…」


政宗様、政宗様。
苦しくってふわふわで止めてって呼んだのに。



くらくらくらくら。



政宗様がもう一回「真樹緒」って呼んだ時には俺もう何にも聞こえてへんくて。
ふわふわずうーっと気持ちいまんまいつの間にか意識が無くなってた。

  

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