……
………


「小十郎。」
「は、」
伝説の忍が白菜背負って飛んでるんだが。


いいのか。
早速尻に敷かれてやがるぞ。


本人らは楽しそうで何よりですな。


顔が緩んでおりますぞ政宗様。
真樹緒と一緒になって「あひるのわるつ」とやらを歌っていたのはどなたか。
あれがもし貴方様だったとしてもさぞや華麗に白菜を背負われるのでしょうな。


「…俺を何だと思ってやがる。」
「今は、ただの甘やかしたがりにしか見えませんが。」
「…この野郎。」
「そのように笑われているのは肯定ですかな。」
「Ha、お前はどうなんだ。」


申し返されてはこの小十郎、ぐうの音も出ません。
肩を竦めて口元を緩めれば満足そうな主と目が合った。
喉を鳴らしながら真樹緒の方へ歩く政宗様の後を追えば、その向こうで牛蒡を掘っている真樹緒が見える。
顔と手を泥だらけにして牛蒡を抜いては隣に控える忍に手渡し、政宗様の姿を見つければ泥だらけで主に向かっていった。


「政宗様――!」
「おっと。」
「ごぼう採ったーー!」
「泥だらけじゃねぇか。」


見て見てーと牛蒡を振る真樹緒は政宗様に抱えられ楽しげに笑っている。
よくもまぁ、その泥団子を躊躇無く抱きとめましたねと息を吐いてみるが、自分に気づき主の時と同じようにこちらにかけてくる真樹緒を避ける気がしない自分も大概だと、首を振り今にも飛びついてきそうな真樹緒のために腕を広げた。


「こじゅさーんごぼう採った!」


なべ!
なべにして!
そう言って首に巻きつく真樹緒は土の匂いだ。
頬についた泥をこすり笑う。


「飯の前に湯だな真樹緒。」
「ぬ?お風呂?」
「そんななりで座敷に上がらせねぇぞ。」
「土、ふかふかで気持ちよかったん。」


へへへーなんて笑っている真樹緒の髪を撫でて政宗様の方を見た。
主は一つ頷いて片手を挙げる。
牛蒡を受け取り真樹緒を下に下ろせば忍がすぐ隣に控えた。

全くよく躾けられているものだ。
小さく吐いた息に忍と真樹緒が同時に首を傾げたが何でも無いと手を振る。


「真樹緒、」
「なん?政宗様。」
「話がある。」
「ぬ、」
「飯食ったら部屋で待ってろ。」
「う?うん。」


未だきょとりとしている真樹緒にゆるりと口元を緩め晴天の空を仰いだ。
眩しい日に目を細め目を瞑る。
主と真樹緒の声が聞こえてきて思わず笑みが漏れた。

ああ、幸せと言うものがまさか目に見えるものだったとは。
得難いものをかみしめて己を呼ぶ真樹緒と政宗様の声に足を速めた。


  

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