「「いってきます!」」


ひまちゃんと一緒に朝ごはんをもぐもぐ。
時間がちょっと遅刻しそうな感じやけどゆっくりまったりもぐもぐ。
お腹がいっぱいになったところでお兄が作ってくれたお弁当もって学校に出発。
今日のおかずはなんやろう。
トマトケチャップの匂いしたからオムライスやったらいいのになって思ってる真樹緒ですこんにちは!

ぬん。
お兄の朝ごはんは今日もおいしかったん。
パンやったけど。
お兄が今一番お気に入りのパンやったけど!
ナントカ酵母が入った天然素材パンで一日限定30個のちょう人気パンやったけど!
それをかりっとトーストして何とも言えやんお味やったけど!


やぁ俺ね、お米好きなん。
おこめ。
それはもうお米があったら別におかずがいらんぐらい好きなん。
やからパン見たときちょっと残念な顔してもうたらお兄に見つかってチョップされてもうたんやけども。

もう、お兄は変なとこで目ざといんやからー。
お米、おいしいやんねえ。
もちもちしてて、つやつやしてて、ふっくらしてて。


「お兄、危ない。」
「ぬ?」


俺がお米に思いを馳せていたら電柱にぶつかりそうになってひまちゃんが止めてくれた。
目の前にはばばーんとふっとい電柱。
そのまま歩いてたらおでこからつっこんでいった感じの電柱。
あれやぁいつの間に。
俺、いつの間に。


「ありがとうひまちゃん!」


さすが俺の妹!
優しい!
可愛い!!


「ぼーっとしてたら危ないよ?」
「ごめんなぁ。」


ふへへって笑いながら通学路を歩く。
家出る時もぼおっとしてたし、忘れ物とかないん?
なんてひまちゃんが言うから「そんな事ないよー」ってカバンの中をチェック。


お弁当入れたやろー。
携帯もあるやろー。
教科書とノートは勿論やし、ミネラルウォーターと、こないだ買ったお徳用の飴ちゃんやろー。
ぬんぬん大丈夫。
多分大丈夫。
大丈夫、やと思うんやけどあれ、でも何か忘れてる気が…しなくも、ない…?


「…お兄?」
「むーん、」
「お兄、」
「むむむ、」
「お兄?」


「あ!」
「…何、どうしたん。」


あかんわあかん。
ひまちゃん、俺たいへん。


「宿題のプリント忘れた!」


やってしまったん。
しかも宿題忘れてきたらめさめさ課題だしてくる先生の数学のプリント。
せっかく昨日の晩やったのに!
お兄に教えてもらいながら全部解いたのに!
頑張ったのに!


立ち止まって見上げたひまちゃんは「もう、」って呆れたように首を振って「ちゃんと昨日の内に用意しておかへんからやで」ってお母さんみたいな事ゆうん。
ぬん、そんな顔せんとってひまちゃん。
おれ切なくなるやん。
ちょう切なくなるやん。


「俺、取りに帰ってくる!」
「待っとこうか?」
「んーん!ひまちゃんは遅れたらあかんから先行っててー。」


手を振って猛ダッシュ。
はよう戻らな遅刻やしー。
校門しまってまうしー。

猛ダッシュで、なおかつお兄の弁当が崩れやんように気をつけてめちゃくちゃ走る。
どこにプリントおいてたかなーって考えながら走る。
それも忘れたとかそんなまさか。
大丈夫大丈夫。
多分机の端っこに落ちてると思うー。


そんな事考えて走ってたら、風が吹いた。
お腹の下から上へ突き上げる様な風がふいた。
とっても大きな風で思わず体が持ち上がりそうになる。


「ぬん?」


足が浮きそうになってまさか、って思わず顔を上げたらそこはいつもと変わらん団地で。
毎日通ってる団地で。
風はもう止んでしまってるし一瞬の出来事で一体何やったろうって首をきょろきょろ。
それでも特に変な所も見当たらんかったから、早く家に戻ろうって足を一歩前に出した時桜の花びらが。


「さくら…?」


ぬん、桜。
桜の花びら。
手を伸ばして捕まえて、桜の木なんてあったやろうかってまたきょろきょろしたらさっきは見つけられやんかったのに、団地の隅っこに大きな桜の木が。
ああ、最近あったかかったしねーなんてその桜吹雪に見惚れて。
ピンク色に包まれて甘い匂いにも包まれて、春やなーって嬉しくなって。
でもあの団地の近くにあんな桜が咲いてたやろうかって首を傾げる。
団地の横には草っぱらがあって、小さい川が流れてて、たしか菜の花は咲いてたけど桜が咲いたことなんてなかったはずなん。


「あれー?」


思わず立ち止まってしまって。
ほんでそろうり桜の木に近寄ってみる。


「やあ、めさめさ綺麗やなぁ…」


……
………


でかいけど





えー。
何、何なんこの巨木。
桜ってこんなにでかくなるもんなん。
見上げるのに首が痛くなるもんなん。
いやいやないわー。


こんな普通の団地の近くにあるような桜とちがうんちがうお前。
ほら、ここは空気読んで何か人が住んでへんような秘境とか山奥とかでひっそり咲いとかなあかんよたぶん。
サービスしすぎとちがう。


大人五人ぐらいが手ぇ繋がんと一回りせぇへんようなぶっとい幹を持った桜は、そんな俺の突っ込みも気にせんと悠々と花びらを散らしてる。


「はー…」


立派やなぁ、なんて触れてみた。


「ぬん?!」


そしたらまた強風が吹いて目の前は桜一色。
一面のピンクピンクピンク。
息が出来やんぐらいの桜の花びらが目の前を覆う。


「な、なん…」


びゅうびゅう吹く風に思わず足をとられて。
ぐらっと揺れた足元はさっきまで硬い芝生やったのに、ぶにゃぶにゃするんは何でやろう。



「え?」



まるで地震が来たように揺れる足元に体勢を崩して、ピンク一色の中、俺は飲み込まれるように意識を手放した。


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やっとこトリップ完了。
次は多分小十郎さんを拾います。
  

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